福島県教育センター所報ふくしま No.17(S49/1974.9) -007/026page
キ 語いが増えてきた段階で,同意異義語の整理をさせておくことも dictation 活動に役立つことと思う。
(例)blue−blew,two−too,one−wonなど
(4)composition
大別すれば和文英訳と自由英作文にわけられる。
前者は,日本文のもつ意味内容を英文で適切に表現する作業であるから,その中に学習者の自由な意志や思想の入り込む余地はない。しかしこの作業から,新しい表現法や語いを身につけることによって表現技能を高めることになる。つまり和文英訳はあくまで表現活動のための学習手段であって composition の終局目標ではない。
後者は外国語で自己の意志や思想を自由に表現するところに communication としての価値があり,また日本語的発想や考え方に加えて,英語的発想や考え方を持つことができるようにするところに意義がある。従って writing 活動が和文英訳にとどまらず,生徒の能力や進度,教材内容に応じて,smooth に真の意味の produc−tion 活動に移行できるように,長期的見通しに立った計画が望まれる。例えば過去文の表現でも次のようなstepが考えられる。
・step1 私はきのう友だちと公園に行った。
・step2 私はきのう友だちと (自由作文)。
・step3(きのう行なったことについて書きなさい。)
1 和文英訳を展開するstep
指示された和文に対してoral composition と併せて
・英文中の blank を補充する。
・与えられた語・句を組み立てる。
(文中の一部について,文全体について)
・英文を書く, ・paragraph を書く。
2 自由英作文を展開するstep
・指示された語・句・文型を使って単文を作る。
(例)have been to〜 を使って英文を書きなさい。
・提示された例文を見て,各自の作文を書く。
(一文から数個の文へ)
・絵や chart を見て文を作る。(1文から数個の文へ)
・自由英文を書く。(指示された主題から自由題へ)
・英文の日記を書く。(1文から数個の文へ)
・手紙文を書く。(例文を参考にする→自由に書く。)
3 指導上留意すべきこと
composition するに当っては,既習の英語知識が多量に必要であると思われがちであるが,100語知っている段階では100語なりのことを,1000語になればその1000語を駆使して自己のいいたいことを表現するのが英作文である。従って,指導に際しては,既習の知識をいかに巧みに運用させるかが問題であって,教師の指導技術が大きな陰の力となる。smooth な production 活動を行なわせるための平素からの指導の留意点をあげると,
・単語 正しい結合に気を配り,自然に響く語の結合感覚を身につけさせておく。
(例)a fine day,a few minutes later,
・連語 切り離された連語では実用性が薄い。語と結びつけたは握が望まれる。
(例)in front of the door,a lot of water
・連語の中の動詞句 文の中に含め充分な oral workを積ませておく。
(例)get up,take care of〜,be surprised at〜,
・語順(文と文型) 英作文とは結局語順につきるといわれる程抵抗の大きい分野である。 structure drill に加えて,文型の理論的なは握も必要である。
次に,活動を展開する上での留意点として,
・chart,picture 類は,生徒の身近で共通の話題内容を表すもので,かつ生徒の imagination が自由に多角的に広がる余地のあるものを選ぶ。
・自由作文の場合は group 活動を重視したい。既習知識の相互交換・相互補助により,活動は活発化し,各個人の力以上の作品を期待できると思う。
・活動の途中で語い,文型が行き詰った場合,教師の advice か,辞書類の助けが必要となろうが,中学校の段階では教師の suggestion が最も有効であろう。
・英文日記は最も手近に実行できる表現活動であるが,継続的に書かせるためには控え目に書かせることであり最初は簡単な一文の記録にとどめさせるのがよい。
(例)June 25th.I went to the library to study history.
・手紙文を書かせると volume の少ないことが気になる。これは既存知識の量でなくて topic の少なさに起因する。手紙文の指導は形式や敬辞(salutation)や結辞(complentary close)などの技術的指導だけでは不充分である。まず sample を与え,提示された topic や paragraph の構成を recognize してから,それらを参考に活動に入ったらよいかと思う。
・作品は時折り発表の機会をとり,内容について oral discussion を行なえば,活動も一段と積極化するものと思われる。
4.おわりに − production 活動を通して−
production 活動は抑えつけられた中で行なわせるのでなくて,自由な atmosphere の中で, 作り出す楽 しさや自己の意志が他に認められる喜びを味わせながら行なうものである。既習の英語を使って興味関心のある ことが らや身近なことを表現させ,たとえ短い時間であろうと授業の中で彼等の意見を取りあげていけば,英語を身近なものと感じ学習意欲も喚起されるに違いない。 また英語で表現するという困鞋な作業の中で,生徒が自らの思考を練り,鍛えることによってことばそのものに対する思考と認識を深めてゆく,この過程の中に英語教育と人間形成の接点を見出すことができるのではあるまいか。
参老資料 書く領域の指導 鳥居次好 研究社
英語教育の諸問題 納谷友一 研究社