福島県教育センター所報ふくしま No.17(S49/1974.9) -010/026page

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 (2)OHPに利用するための岩石薄片モデルの利用について

 岩石の肉眼観察や,岩石薄片の光学的な観察の指導のあとで,種々の岩石の特徴をモデル化する(その岩種特有の性質を一般化する過程で)場合に,岩石薄片の組織,および鉱物組成をモデル化したOHP用シートを作成しておくと効果的である。

 まず,偏光拡大鏡か偏光顕微鏡で岩石薄片の組織を観察して,これを第6図のように粒と粒の境界をスケッチする(この場合,視野の直径は10〜13cmぐらいにするとあとで便利である)。

a 花こう岩スケッチ
 (鉱物の境界のみを書きとりセロファンテープをはりつける)

b 安山岩のスケッチ
 (セロファンテープの枚数を調整しながらはりつける)

第6図 偏光顕微鏡などで岩石の組織の概略をスケッチ
第6図 偏光顕微鏡などで岩石の組織の概略をスケッチ

 スケッチした粒の形のようにセロハンテープを切りぬき,その位置(シート上の粒の形)にはりつける。この場合,テープを切りぬく向きは,テープの伸びに対してななめにしたり,直角あるいは平行など,いろいろの切り方をするのが良い。さらに,その粒によって1〜6枚位の範囲で,テープを重ねばりして変化をつけると偏光拡大鏡で見られる像と同様な像がスクリーン上に投影される。

 第6図は筆者が製作した花コウ岩と安山岩のシートであるが,図の中に参考までにセロハンテープをはりつけた枚数(算用数字)とテープ切りぬきの方向を(矢印)示したものである。

 この様にして準備したシートは岩石薄片とほぼ同様な光学的な特性を示している。そこで直径15×15cmの偏光板2枚(検光器と偏光器−偏光拡大鏡の場合と同様)を準備し,これをオーバーヘッドのガラス面に1枚だけおき,さらにもう1枚を投影レンズ側におき(この場合レンズ側においた偏光枚は,振動方向が直交するようにセットする。すなわち,スクリーン上には光がとどかないようにする),その中間に製作した岩石薄片シートを入れてピントを合わせると,赤,緑,黄など数々の色がっいた像(岩石薄片を偏光顕微鏡で見た像と同様な像)が得られる。

 さらに,この状態から,このシートを回転すると色が消えたり,明るくなったりして消光の様子も観察できるので生徒の観察に関する注意力・興味・関心を充分に養えるものと老える。さらにこれを使い(種々のシートを準備することによって),生徒達の岩石観察の視点を整理(一般化)することも可能である。

 なお,セロハンテープの厚さと色の関係は,実際にシート上に1〜6枚重ねあわせたものを,それぞれはりつけ,2枚の偏光板の間で調べてみて確認したあとで使用するのが良い。それはセロハンテープの厚さが,同じメーカーであっても少しずつ異なる場合があるので注意する必要があるからである。

第7図 岩石モデルをOHPで投影する
第7図 岩石モデルをOHPで投影する

(1)(2)の方法は,著者が試みた結果,極めて効果があり,精度が良いので,これを観察指導にとりいれることにより成果が期待できるものと考える。

5.おわりに

 理科の探究的学習過程において,もっとも基本的なことはある一つの問題意識をもって,それに沿った的確なデータをまず集めることである。この場合,ややもすると指導者は,学習結果を一般化する過程に到達した時点で,観察データから得られる以上の結論まで無理に持っていこうとする場合がよくある。このことは生徒の実験・観察への意欲を失わせる結果になる。そのためには指導者自身が種々の結果をあらかじめ予測することが重要で,それをもとに逆に問題意識をさせる段階での意識の程度を考えねばならないだろう。

 前述の立場に立って実験・観察が始められたとしても次に問題となるのは実験・観察の材料数の不足である。

 実際にその実験・観察に参加できない生徒がいる場合は,集められたデータの持つ意味の理解に抵抗が生じてくる。これでは,その生徒にとって以後の過程が理解できないであろうと考える。そのためには,豊富な実験・観察の機器が提示され,すべての生徒が参加できることが重要である。

 今回はこの点に注目し,各中学校で充分準備できる機器の利用を考えてみたわけである。

 要するにこの領域の学習は,岩石の組織(鉱物の種類を覚えるということではなく,その粒子の配列状態の特徴)の特徴をは握し,一般化し,これをもとにしてその岩石の生成の過程を推論することにねらいがあるだけに,特に各生徒に多くの観察の時間と場を提供したいものである。

 紙数の関係で,詳説を欠いた面があるかと思われるので,不明の点は教育センターに問いあわせられたい。


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