福島県教育センター所報ふくしま No.17(S49/1974.9) -013/026page
日常,家庭で行なわれる家事作業は,複雑多岐にわたつており,それに付随して収納作業がある。家事作業の能率化をはかるためには,収納作業の合理化を図ることがたいせつであることを理解させる。
(2)実験方法
1)用具・材料収納棚の他は1,で使用した用具・材料でよい。
2)方 法
準 備
1. 1,と同様の準備をする。
2. 棚の高さ及び棚からの距離は図7のようにする。
(今回は本棚を用いた。棚は調節ができるものである。)実験
1. 作業は身体前面を棚に平行にして立ち,右側の台(高さ65cm)においた物を両手でとりあげ,棚に置く動作を行なわせ撮影する。
2. 試験者はおのおのの高さの時の動作を観察し,気づいたことを記録する。
判 定
1. 被験者に動作のしやすさについて意見を聞く。
2. 撮影した写真により至適収納作業高について検討する。
図8 肘高の動作棚
前面より20cm離れ
図9 肘高の動作棚
前面0cm
図10 膝蓋骨高の動作
棚前面より20cm離れ
図11 膝蓋骨高の動作
棚前面Ocm図8〜図11までのサイクルグラフは,ポラロイドカメラで撮影したものである。フィルムはポラロイド3000スピード白黒フィルムを使用した。暗室を使用し,動作が見える程度のあかりをっけ,フィルムスピードを3000にし,明暗コントロールは,LIGHTEN の最高にして撮影した。撮影の方法は,図6の洗面の動作のときと同じである。
(2)実験結果と考察
紙面の都合で,図8と図9の肘高の棚に物をのせる動作と図10と図11の膝蓋骨高の棚に物をのせる動作だけをあげた。図8の光跡Aは肩峰点,Bは肘,Cは手首の位置を示している。他も同様である。図8と図10を比較すると図8の方がA,Eの光跡が短かい。光跡の短かいものほど仕事量は少なくなる。
図8と図9および図10と図11は棚からの距離の違いによる光跡の差をみたものであるが,どちらも棚前面につま先をつけた方が光跡が長くなっている。これらのことから,棚に近づきすぎた場合,作業の動線は必ずしも短かくならず,かえって無駄な動作となっている。家具を配置する場合には,このことを考慮に入れ,適当な余裕をおくことがたいせつである。
至適収納高は,肘高を中心に肩峰高から手首の高さ附近に認められる。なかでも肘高と手首の高さは動作が最も楽である。ひん繁に使用するものの収納にはよい。次いで肩峰高,眼高となる。不適当な作業高は最上限および最下限である。特に棚前面の狭い場所で低い棚や戸棚に物を収納する際は無理な姿勢となり,疲労しやすい。棚前面の適当な空間と最下限へ収納する物のくふうが必要である。
3.おわりに
作業と作業域の研究の一方法として,洗面および収納作業の動作をとりあげて述べたが,これは一部にすぎない。日常生活においては,調理時の動作,押し入れタンスなどへの収納作業動作と必要な空間など種々の場合に適応できるものである。
すまいは家族生活の根拠地である。家族生活が快適に行なわれるよう機能性や合理性とともに情緒もたいせつな要素であることを知らせ,これらの要素をもとに便利な家具を正しく選択し,それを合理的に活用する生活技術を養いたいものである。