福島県教育センター所報ふくしま No.18(S49/1974.11) -005/025page

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小・中学校教材

発想の転換による教材化


第1研修部 藤田 利雄


1. はじめに

材料の中に子供をおくと、必ず何かをつくりはじめる。たたいてみる、なでてみる、のこぎりやくぎや金づちがほしくなる。物をつくるという作業は子供にとって、造形の本質的な喜びの世界をひらくものである。子供に自己表現の場を与えるために、工作・工芸の占める位置は非常に重要なものであると思う。広くあらゆる造形の創造と理解のためには、現在小・中学校でよく問題にされている工作・工芸不振の原因をたしかめ、その障害を排除する手だてを施さなければならない。ここにその糸口として、工作・工芸における、発想の転換による教材化について、一つの試案を述べてみたい。

2.工作・工芸成立の要因

工作・工芸は図画や絵画と異なり、表現材料がそのまま表現条件を決定づけるものである。粘土工作、紙工作、木材工芸、金属工芸、プラスチック工芸等の呼び方から作品や工作法ならびに用具等が想起される。このように工作・工芸においては材料にかかわるものが第一の問題として出てくる。材料がちがうと表現抵抗も異なり、用いられる用具も、技法も必然的に異なる立場から選別されなければならない。
次に工芸で重視される機能も、材料のもつ性情、特質の上に成り立つことは勿論で、用途と材料の結びつきが不安定なものからは美しい工芸品は生まれない。更にまた用と材がうまく結びついても、材料を加工する創造活動のための技術が十分に駆使され、開発されない限り工芸の製作活動は不満足なものに終始してしまう。

3.工作・工芸に用いられる材料について

(1) 材料を形状により分類すると
1.塊材、2.面材(板材)、3.線材に大別される。これらを造形上の心理的効果の点からみてみたい。
1. 塊材
かたまり状のもので、どの面からみても閉ざされた感がある。量感、充実感があり、求心的充実感を表現するのに適している。
2. 面材(板材)
面には広がりと、側面には伸張感と線材のようなするどさや軽快さがある。閉ざされた感の塊材と線の方向に伸張しようとする線材との二面の性質をもつものと思われる。
3. 線材
細く長いという特色上、軽快さ、伸張感、リズム感などの表現に適している。円筒、円錐状にうず巻きで用いることにより空間感などを出しやすい。

(2) 材料の性質と心理的効果について
1. 石
硬さと重さを感じさせるものが多く、不変性をそなえている。
2. 土
包容力と親近感を感じさせ、やわらかさと素朴さが特色である。焼成によってガラス質や石に近い感じを出させることができる。
3. 金属
人間の文明を発展させた材料の中の、主なもので、光沢、強靭性、高貴性があり、人類にとってもっとも信用度の高い材料である。硬さと加工の自由さから、道具的材料ともいわれている。
4. 木
人間の肌にもっとも親しみとあたたかさを与える。素朴さと優雅さを兼ねそなえ、土と同じく人類にとって、もっとも古くからつき合いのある材料である。
5. 紙
薄くて、広い性質は日常生活に幅広く親しまれ、活用されている。手ざわりの良さ、加工の容易さは木材以上で、極めて用途が広い。
6. プラスチック
最も人工的な、モダンな材料で、これから更に用途や、材料加工法など発展が予測され、まだまだ多くの可能性を秘めて、研究されつつある新しい材料である。最近、工作・工芸の教材としてぼつぼつ用いられ始めている。
この外にも石こう、セメント等種々用いられているものがあるが省略する。

(3) 材料機能について


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