福島県教育センター所報ふくしま No.18(S49/1974.11) -009/025page
ような内容になる。
3. 基本動作の指導
基本動作は単調なため、早く練習にはいりたくなり、おろそかにしがちである。しかし基本動作が正確にすばやくできるようにするためには、じゅうぶんくり返し練習をしなくてはならない。基本動作を正しく理解し身につけているかどうかは、技の進歩に大きく影響してくる。基本動作には、受け身、姿勢と組み方、移動と歩き方、くずし、体さばき等があるが、危害防止の意味も含めながら特に初歩的段階を中心に述べてみたい。
(1) 正しい技のかけ方の基本を身につける。
柔道では基本としての受け身をじゅうぶん練習させることが、安全と傷害防止の要点であるとし、この面での指導の充実を期することが求められていた。しかし現実に傷害の現状をみると、受け身の適否だけでなく、施技の適否がより多く傷害につながっていることが明らかにされている。
指導にあたっては何よりも正しいかけ方の基本はじゅうぶん身につけさせることである。正しい体さばき、くずし、力の用い方、体勢が安定し同体に重なって倒れないための要点を理解させ、くせをなくすことである。指導内容に生徒が好んで用いる背負い投げを入れないことは、中学期の発育状況からはこれを正しく修得することが困難で危険度が高いと考えられるからである。
(2) 引き手の正しい習慣づけ
危害の現状からみると、引き手を離したり、引き手がふじゅうぶんなために、受け身が取りにくいことが主な傷害の原因になっているようである。技能構造の分類からは、高い位置から投げられる払い腰、はね腰、大外刈りのように、投げ方のバランスが取りにくく、同体に倒れやすいものがあるが、中でも引き手を離したために頭部を打傷するケースが多いことに注目したい。■ 投げと引き手を反復練習させ、正しい習慣をつける。
○ 引き手の正しい投げは、確実な受けがとれる。
○ 投げの種類、組み手の右左による指導と、体さばきの指導をじゅうぶんにおこない同体による転倒、よろめきなどで手を離したり、逆な投げ方をしないようにする。
(3) 受け身の工夫をする。
受け身は投げられたときの自己の安全性を確保する技能であるから、受け身の未熟さは、当然傷害発生に関係してくる。前、後、横、など投げわざの系列にしたがって倒れ方を考え、投げることと倒れることを、対人技能との関連性をもとにして練習をする。■ 練習過程(1の段階)
最初は、倒れたときの衝撃を最少限にして体を守るには、どんな動作が必要になってくるかを練習する。
○ 腕や足を使って衝撃をくいとめる動作をたしかめさせる。
○ 一部位に衝撃が集中しないようにする。
腕一下背部一智部一脚の順に着床する。■ 段階的に高さを加えた練習(2の段階)
横受け身
○ あおむけの姿勢で、ごろごろ横軌、手でとめる。
○ 片足うらを使って手の補助をして早くとめる。
○ あごを引き頭を畳につけないで、手足を使って半身でとまる。うしろ受け身
○ からだを前に倒して曲げ、うしろへ反動で倒れて両手を使い、背中、頭を守る練習をする。前受け身
○ 膝をつき、上体を起こした姿勢で、うしろから押してもらう。
○ 胸や顔を守るため、手で先に畳をたたいて倒れる。これらの諸動作、手のつき方、足のあて方、頭の支え方ができるようになって次の段階へ進む。受け身は固定的なものでないので、基本動作を理解し会得した段階になったら、動き、高さ、方向などを加え、一連の動作として技能の練習をする。