福島県教育センター所報ふくしま No.18(S49/1974.11) -013/025page

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中学校教材

原子・分子に関連した実験の工夫

第2研修部 佐久間 善克

中学校の化学的領域では、2年生で、化学変化の量的関係を巨視的な事実としてとらえさせ、その中から質量保存、定比例の諸法則性を見い出させる。これらを統一的に説明するために、微視的に考察させ、1年生の時考えた単純な粒子モデルを発展させて、原子モデルまで高めていく。
原子モデルを使えば、質量保存や定比例の法則を説明することができるが、この段階にとどまらずモデル学習によって新しい未知の事象を予測することができることも大切な指導である。原子モデルでこのような予測の指導の1例としては、倍数比例の法則を考察させることであるが、この部分の指導が脱落しやすい。また、倍数比例の法則を予測して、それを実験で検証させることは科学の方法の指導上大切である。
気体問反応の体積関係の測定から原子モデルに限界のあることに気付かせ、分子モデルに発展させる。生徒の能力によっては、アボガドロの法則まで拡張することが考えられる。
この部分の学習指導は、実験→データの解釈→モデル化→予測→実験観察(検証)と科学の方法に沿った指導として望ましい部分である。

アボガドロの法則までのフローチャート

原子、分子モデルで化学変化の量的関係、体積関係などが矛盾なく説明できることからモデルの有効性を理解させる。次に、分子の大きさを測定させることによって微粒子概念を固定させる。
しかし、化学教育の問題点の一つは、目では勿論、機器を用いても見えない原子、分子などの概念をモデルを通して指導理解させることである。即ち、巨視的現象を目で見られない微粒子の行動として微視的立場からモデル化して思考させるのだが、これは、抽象度の高いもので困難なことである。しかし、科学の方法の技法の一つとして、非常に大切なところなので、必ずとり入れなければならない。従来は教師から与えられたモデルによって演えき的思考に重点がおかれたが、やはり実験事実を基礎に帰納的にモデルを考えなければならないので、今までにも各種の実験が考えられ実施されてきたが、まだまだ工夫の余地は残されている。
定量的実験は精度を上げ、良いデータを出さなければ良い結論を導き出すことができないし、実験の目的を見失い、生徒達に定量的実験に対して不信の念を抱かせることになる。また、時間的制約からも、できるだけ短かい時間に実施でき、簡明であるのが望ましい。さらに教科の指導方法の研究に意欲的に取りくんでも、それに伴う実験の検討が行われなければ、学習の指導方法に適した実験にはなり得ず、方法論が空転し、学習効果を十分に上げることはできない。
実験改良の試みのいくつかについて述べ、先生方の御検討をお願いしたい。

I 倍数比例の法則の実験

倍数比例の指導に関する実験が余りみられず、教科書などからもそうした概念が姿を消したのは、実験上の困難さ、即ち、操作に時間がかかり過ぎるためと思われる。しかし、中学校指導書理科編の中で「生徒の理解の程度によっては、2種の酸化銅を還元して、倍数比例の関係を導くことも考えられる。この実験は、分子モデルの導入に際して有効な資料となろう」「原子や分子のモデルは、単にいままで学習してきたことを説明するだけでなく、新しい事象を予測する場合にも有効なことを指導することも大切である」として倍数比例の法則をとり上げて説明している。従来のモデルの学習は事実の説明に終始してきた感じがあるが、指導書に説明されているような学習が大切なのである。そのためにも、時間がかかり過ぎる問題点はあるが、倍数比例の実験をとり入れる工夫をして、モデル学習を充実して欲しい。

方法
(1) 塩化銅(II)CuCl 2 ・2H 2 O、塩化銅(I)CuClをそれぞれ0.5g、1.0g、1.5gはかる。
(2) 1M-HCl5ml加えてよくかきまぜ、次に水20ml加えて溶かす。加熱沸騰させながら1cm 2 位のAl片5〜6枚入れて反応させる。
(3) 加熱を止め静置して銅の析出を待つ。
(4) 完全に銅が析出し、水溶液が無色透明になったら水を捨て、水洗い3〜4回、次にメタノール洗い3〜4回繰り返えし、その後60℃位で乾燥する。

結果の1例


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