福島県教育センター所報ふくしま No.18(S49/1974.11) -016/025page
小・中学校音楽科教材 教材の多面的活用の一考察
− 児童・生徒の作品を教材とした伴奏づけを中心として −
研究・相談部 吉田 友保
はじめに
マスコミによる一般大衆音楽の氾濫により,好むと好まざるとを問わず,これを肌で感じ,機械的に再表現しているにすぎない現代の子どもを考える時,学校で取り扱う教材をいかにして子どもたちに取りくませるかは,音楽教育の重要なポイントである。もちろん,そのための教材研究,教材の取り上げ方,教材の構造化・・・等が音楽教育の分野でも重要視されるようになってきたことはいうまでもない。
さて,こうした教材の取り扱いについて,ここでは児童・生徒の作品にスポットをあててみる。
平易な子どもの作品でも,これに肉づけ(伴奏・編曲等)をすれば,ホモフォニー(homophony)としての立体的なボリューム感と律動感が充足され,これを授業で取り扱うことによって,子どもの創作への喜び・意欲は倍加される。さらに活用方法に意を用いれば,基礎・器楽の分野等,幅広い学習活動が展開されよう。以下,1作品を例として述べてみる。
(※印は,授業での取り扱いを示す。)2. 伴奏づけの手順
(1) メロディーとハーモニーの相互関係を考える。現在,各学校が使用している教材には大部分和音記号が記入されているので詳述はさけるが,いずれにせよメロディーのバックには和音が密接に関係しているので大まかにハーモニーをつかむことが大切である。(一般には1小節に1つか2つの和音) − 楽譜1,2
楽譜 1 昭和48年度福島県音楽祭作品,特賞
(福島第一小学校 S生)
楽譜 2
※子どもと共に和音づけをし,さらにハミングによる和音唱や楽器による分担奏など多面的な学習活動が可能である。(2) 伴奏の型を考える。
メロディーに合う効果的な伴奏の型は,その作品の曲感や伴奏に使用する楽器により多岐にわたるので,一概に述べることはできないが,リズミカルな曲にメロディック(対位法的)な伴奏づけをしたり,長音符による和声的な伴奏にピアノ(音が減衰する)を使用するなどは(曲に変化を与えるために,作為的に使用する場合を除き)原則としてさけるべきであろう。(ア) ギターによる和音を基調にしたリズム伴奏の例
楽譜 3
※ギター伴奏の場合,個々の能力・適性に応じた段階的下位目標を設定し,丸1〜6は個人としての系統的,発展的な学習方法により取り扱い,丸1と丸2を2人→和音別にグループ分担→高度の能力をもつものは全コードを,というようにプログラム学習的な配列も可能である。また,メロディーの独奏に楽譜4のような分散和音伴奏を加えて重奏することもできる。