福島県教育センター所報ふくしま No.19(S50/1975.1) -007/026page
4. 日本の音楽の教材と内容
教材 学習内容 資料(補助教材など) 雅楽(管弦と舞楽)
「蘭陵王」,「納曾利」
催馬楽「更衣」1.礼楽思想と音楽
2.外来音楽の輸入と消化
3.楽器の種類と役割
4.舞楽の様式
5.多音性とポリリズム「越天楽」(盤歩)
「舞楽」(黛 敏郎)
「遭遇II」(石井真木)
スライド声明
「天台声明と真言声明」1.仏教の伝来と音楽
2.Monophoyと異音性
3.自由リズムと拍節リズム「グレゴリオ聖歌」
「涅槃交響曲」(黛 敏郎)
スライド琵琶楽
「祇園精舎」(平曲)
「武蔵野」(薩摩)
「菅公」(筑前)1.仏教思想と音楽
2.語り物と音楽
3.歌と楽器(前秦と合の手)
4.旋律型とポリリズム「ノベンバー・ステップス」(武満微)
スライド能
「隅田川」「羽衣」1.武家階級と文化
2.謡と囃子
3.旋律の単純性とリズムの複雑性劇音楽(オペラ,バレエ)
「沙羅」より鴉(信時 潔)
スライド三味線
「神田祭」(清元節)
「娘道成寺」(長唄)
「鮨屋の段」(義太夫節) 1.商人文化と音楽
2.語り物と歌い物
3.劇場音楽と室内音楽
4.旋律型と音色(楽器比較)「津軽三味線」
「三味線の奏法」
スライド箏
「秋風の曲」(光崎検校)
「尾上の松」(宮城道雄)1.箏曲と地歌
2.奏法と音色
3.ヘテロフォニーとポリリズム「箏,譚詩集」(三木 稔)
「尺八,三弦と二面の箏のための四重奏曲」(間宮芳生)
ピアノ,三重奏曲 スライド尺八
「虚空鈴慕」
「夕暮の曲」1.禅の思想と音楽
2.尺八のリズム(自由リズムと拍節リズム)
3.ポルタメントと微分音,音色「冥」(福島和夫)
「尺八三重奏曲」(清瀬保二)
追分民謡(自由リズム)
スライド高等学校音楽(I・II・III)の中で上記の程度の教材と内容は是非取り⊥げられるべきもので,年次によって取り上げ方も内容も異なってくるが,前述の捉え方を基本として,日本の音楽の教材化がはかられるべきである。
年次によって指導内容や指導計画も異なってくるが三つの指導内容の要点(例)を上げてみる。
(1) 「基礎」のなかに日本の音楽の特質を位置づけた学習
西洋音楽の「基礎」と同じ位置づけで,特質を比較感得させる。(2) 種目を中心とした学習
「管弦と舞楽とか「三味線の音楽」というような種目の中で,それぞれの音楽を通して特質を感得する。(3) 歴史的流れを中心とした学習
文化史的背景と音楽の発達,変遷を通して日本人の心や美意識を理解する。5. 指導上の留意点
指導上の基本的な考え方を述べたが,その他の指導上の留意点を上げてみると
(1) 指導すべき内容,観点を明確にし構造化をはかる。
各楽曲はそれぞれに指導すべき多様な内容を包含しているが,それらのものの中からねらに即して精選し,指導の観点を明らかにし,最適な構造化をはかる。(2) 感性的は握と知性的定着を図ること。
感性的は握を優先させることが大切であり,さらに知性によってその感性をささえその定着をはかるようにする。(3) 能動的・主体的な学習にする工夫をすること。
受動的・消極的な鑑賞学習になりがちな日本の音楽を,実音の伴った,たとえば唱歌や楽器の表現活動を通して享受できる工夫をすること。(4) 教育機器の活用
日本の音楽には視覚的に訴える面が多いので,できるだけ教育機器を活用して日本の音楽になれ親しませること。おわりに
音楽の教師のなかで日本の伝続音楽の教育を受け,和楽器を演奏できる先生は何人いるだろうか。教員養成大学の音楽教育にも問題があるが,日本の音楽の教育や経験がないから,ではすまされなくなってきている。音楽には教えることのできない要素も多分にあリ,音楽的に優れた資料を提供し,生徒と共に体験し享受していくことも音楽教育では大切である。日本の音楽の学習にもこの姿勢が必票ではないだろうか。