福島県教育センター所報ふくしま No.19(S50/1975.1) -008/026page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

小・中学校教材

効果的な実験指導法の検討

一化学実験を中心に一

第2研修部  小野寺 寿雄

近ごろ,小・中学校で扱う実験の内容が高度になって時間がかかりすぎたリ,よいデータを得ることが困難であるという声を聞くことか多い。

たしかに,新しい学習指導要領の施行以来,指導過程上における実験の位置づけが多様化し,、こどもたち自身に規則性を発見させるような学習法が強く主張されてきたために,新しい実験がとリ入れられたり,定性的なものよリ定量的な扱いをするものが多くなってきたことなどによって,実験は従来よりもむずかしいものになってきているといえよう。それに,施設・設備などの問題もからんで,前述のような声になるのも,うなずけるとこるである。

しかし,実験は,いうまでもなく,科学の方法の中で最も高次なものとして位置づけられておリ,理科学習の中核をなすものであるから,これを省略して学習を進めることはもちろん,不確かなデータから,もっともらしい結論を導くことは,厳に慎まなけれぱならない。

そこで,ここでは,2つの化学実験を中心に,短時間に,よいデータを得ることを視点として,効果的な実験の指導法について検討してみたい。

1. 金属のとけるはやさ (小学校・6年)

金属と酸やアルカリの水溶液の反応が,水溶液の濃度や反応の際の温度とどのように関係するかを予想し,それを検証する実験である。この実験の中で,アルミニウムと塩酸を使用することが多いが,反応が終了するまでかなりの時間を必要とすること,そのために,課題意識が薄れ,ねらいが不明確になリやすいこと,実験に当たって条件の統一が難しいことなどの外に,塩酸とアルミニウムの粗み合わせという,材料そのものに起因する問題もあるようである。

実験例
主な準備物:アルミニウム管(直径2.0mm,模型飛行機材料として市販されているものが扱いやす い),濃塩酸,試験管,ビーカー,温度計,ストップウォッチ,アルコールランプ
実験1 〔課題は握と予想のための情報を収集する〕

グループごとにいろいろな濃度の塩酸を与え,アルミニウム管を入れて,変化を調べる。

濃度の違いによる反応の様子の違いや発熟の状態に着目させる。
実験2 〔塩酸の濃度ととける速さの関係を検証する〕

[1] 濃塩酸10cm 3 ずつをそれぞれ5cm 3 ,10cm 3 ,15cm 3 の水に加えて薄めた水溶液を作リ,別々の試験管に10cm 3 ずつをとる。

[2] それぞれの試験管に長さ1cmのアルミニウム管を入れて,とけ終わるまでの時間を測定し, 結果をグラフ化する。

統一しなけれぱならない条件に注意させる。
実験3 〔塩酸の温度ととける速さの関係を検証する〕

[1] 濃塩酸を水で1/2の濃度に薄めたものを4本の試験管に10cm 3 ずつとり,1本はそのまま,外の 3本は,現在の塩酸の温度よりそれぞれ約10度,20度,30度高い温度に保ち,温度を正確に測定する。

[2] それぞれの試験管に,長さ1cmのアルミニウム管を入れ,とけ終わるまでの時間を測定し, 結果をグラフ化する。

統一しなけれぱならない条件に注意させる。

ねらいの明確化

ねらいを明確にして,強い課題意識をもたせるために実験1において,グループごとに異なる濃度の塩酸を与えアルミニウム管を入れたときの変化を観察させる。濃度が違うので,盛んに気体の発生するグループと,ほとんど発生をみないグループがでるはずである。これによって,どうすれぱ気体の発生を盛んにすることができるのだろうという疑問を強くいだかせることができよう。そして,それが濃度の違いによるのではないかと予想させ,さらに,変化の様子を注意深く観察させることによって,はじめは穏やかだった気体の発生が,しだい激しくなるとともに,アルミニウム管がとけていくこと,および,発熱していることに気づかせる。これらのことから,気体の発生とアルミニウム管のとける現象の関係をとらえ,それが温度にも関係するのではないかと予想させることができよう。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。