福島県教育センター所報ふくしま No.19(S50/1975.1) -013/026page

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中学校2年における「動く模型」の製作ほ,「小学校の図工科における動くものをつくる工作の指導を発展的に受けとめ,一定の目的をもった動く模型または生活用品を製作させる」(学習指導要領技家指導書)。

※「動く模型または生活用品の設計と製作を通して,機械のしくみについて指導する。」

運動の方向や速さを変えるしくみをもつものを設計し製作することかできること。
回転運動を往復運動に変えるしくみをもつもの,平行運動のしくみをもつものを設計し,製作することができること(中2・技家・C機械(1))

と発展してきて,この学習が機械整備に関する学習へとさらに発展していくのである。(中1は設計・製図)ともあれ,すでに小4でのこぎり,かなづちを使用し,接着,緊結のための材料およぴ用具をつかっている。小5に至って「つくるものの形や大きさの図示は,説明的な絵や図を主とし,必要に応じて図の見方や書き方を理解して」つくることを経験している。工具もペンチ,糸のこぎりを使い,材料の種類や性質に合わせて接着・緊結して,工具の使用方法を「理解して」つくることをしている。小6になると,「工具の特色,技法」の理解をして,「生活に役立つものの目的を考え,美しさも考えて計画的につくる」ということで,5年生の学習にさらに熟練するという学習をしてきているのである。しかもつくるそのものが,滑車,輪軸など動きを伝える機構を考えて動くものをつくる。工具も,木,金属等の材料に用いるその技法を理解させて,効果的,有効に生かして使用することを学んでいる。

わが国の教育のシステムは,ら線状型教育であるといわれ,その学年で学習したことが,次の学年でさらに強化指導される。「参考になる作品,資料を調べて着想を具体的におさえ,表示し,材料を準備し,つくる順序をきめ,機能や構造を検討しながらつくる(小6)。「つくるもののでき上り図,前から見た図,横から見た図がかける程度」としながら,指導者によっては,投影,等角図のかき方も指導しているし,施設々備のある小学校では,糸のこ盤の使用も経験させている。中学校1年では,木工機械の使用をあまりしないものとし,中学校2年でその使用を考慮することにはなっているが,.かれらの学習経験が,すでに相当程度行われていることにも注目すべきであろう。

中学2年における「動く模型」の製作は,単にそれを作って楽しむというものではなく,機械のしくみを理解させるためのものであるが,小5,小6の「動くおもちゃ」の製作も,中学2年のそれを指導目標として含んでいることに着目しなければならない。

この表を見ると,上記のそれ以外をも認知できよう。すなわち,中学校技術・家庭科における「創意・くふう」が,小1の学習ですでに始まり,「生活に必要な技術を習得させ,それを通して生活を明るくするためのくふう,創造の能力およぴ実践的な態度」は段階的に学習経験してきている。材料にしても画用紙から細木,厚紙薄板と発展して,中学校で板材となり角材使用となっていく。小学校でどの程度の工具,道具を使用経験してきているか,出身小学校の設備を視察することも一考に値しよう。

このような学校における学習経験のとらえ方は,きわめて安易なことであるかもしれない。しかし,生徒たちの先行経験をいかに規定し,とらえるかということになると,素朴ではあるが最も手近で,的確で,指導の原点にもどれるかということを注意したいのである。こうすることも行われて,今から指導しようとしている学習目標に向かって,その必要事項を細分化し,学習目標達成に必要な経験度,技能度の個人票を作成するくふうは,これをもってしてもおのずからくふうできるのではあるまいか。中学校課程の学習ほ,小学校のそれと比較して段階的に高度になり,専門化していく。生徒の学習経験が次の段階の学習に無に等しい場合も予想される。生徒の学習評価で「それの学習目標に到達できなかった」ままに放置された者等がこれに当たる。小学校における学習経験においても同じくいえよう。各学年を経てきているだげで,その学習の中でなんの習得もなく過ごしてきている者の発見,分析もおとしてはならないわけである。

○おわりに

以上は,単に「動く模型」に至る技術・家庭科(男子向き)2年「C機械」までを見つめてみた。生徒たちの学習経験を小学校図工科へもどってたどってみた。しかし,実際面の指導ではこれだけでじゅうぶんというものではない。他教科特に理科の学習歴もたどってみなくてはならないし,中学校における他教科の学習経験は握も重要である。ただ本教科のみを注目するのではなくて,生徒の学習経験を可能な限りにおいては握し,体得していること,習得している技術,能力のは握が,学習指導の展開上必要なことであって,ひとり本教科のみに限らないわけである。学校における指導は,一定の学習をすすめていこうとするとき,その学習の動機づけの基礎として,その学習に適する生徒のレデネスをは握する上で,教科の特質をふまえ,先行経験をたどるのである。ときとして生徒の既習概念,誤れる固定化された経験からくる偏見,主観の除去を図って,学習の最適化をねらうのである。


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