福島県教育センター所報ふくしま No.19(S50/1975.1) -017/026page

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評価の最適化を求めて

研究・相談部  坪井 洋三

1. 教育評価の重要性

評価とは,当面している問題領域に関して生起した事象について測定し,さらにそれを目標との関係で解釈し価値の決定を行い,より高い価値や目標の達成をはかる過程であるといわれる。教育評価も実にこの意味であり当面する問題領域を限定するために「教育」の語が付されたものと解してよかろう。

教育評価の目的を考えてみると


[1] 教育計画や教育方法改善のため

[2] 児童生徒に自己の進歩の実情を知らせて学習の動機づけをするため

[3] 記録・通知・学級編成・選抜など管理的目的のため

[4] 教育研究のため

などがあげられる。とくに近年は[1][2]が重視されるようになってきていると思われる。これは,従来の評価が管理的な面に力点がおかれがちであったという反省と同時に,教育の領域にO.R.の考えを導入しようすとる思潮があることを見逃すことはできない。すなわち,児童・生徒と教師を対等の立場にすえた上で最適な教授学習の方略(Strategies)を科学的,客観的,合理的な根拠にもとづいて追求しようとする考え方である。そして今日,教育評価の役割は.教育に係わりをもつ全ての事象において,より価値的なものを志向するための指針となり,更には教育行為の計画や実践を決定づける根拠とされるようになってきているのである。

2. 教育評価の最適化

教育評価の範ちゅうは,児童・生徒の評価,教育計画の評価,指導方法の評価,教師の評価,学校施設の評価環境の評価,学校経営の評価,教育行政の評価たど広汎にわたる。分類のしかたや,範ちゅうのおさえかたは他にもいろいろ考えられよう。いずれにしても,教育評価の対象となる事象は多岐であり,教育作用として機能するときそれらは複雑に係わりあい交互作用をもつものであるから,評価もそこまでたち入ることが必然的に要講される。しかし,現段階でこれは極めて難問であり,まず部分最適化の方法でこれにアプローチすることが実際的であろう。この小論では,学習指導の最適化(個々の子どもの学習効率を最大にする)に対応するものとして児童生徒の評価のあり方を吟味してみたい。

3. 形成的評価の視点からの吟味

まず,領域・単元を内容的見地から小さな学習単位に分解し,この学習単位を構成要素に分析する。このとき,新しい内容や教材に係わる構成要素に注目していく。また,学習単位を目標的見地から分析して目標群を作る。目標群を作るには,つぎのような行動のカテゴリーによって内容に含まれる行動を分析する方法がよいとB.S.Bloomは提唱している。すなわち,用語の知識,事実の知識,法則性と原理の知識,プロセスや手続きを利用する技能,変換する能力,応用する能力などである。そして,構成要素と目標群を両軸とするマトリックスを作れば,構成要素と目標群とが関連づけられ形成的評価のための目標細目表ができる。

目標細目表が内容と行動のカテゴリーの点から適切に分析されていれば,それを背景として有効な形成的評価のテストを作ることができる。このとき,目標細目表に含まれる全てが等しい重要性を持っているとは限らないので何が重要であるかを判断し決定しなければならない。

形成テストにおける分析の第1は正答水準についてである。80〜85%の正答水準であれぱ習得とみなし,50〜60%以下であれば未習得とみるべきである。

第2は,児童・生徒が自分の誤りをとらえ,目標とする内容と関連づけることである。これにより自ら誤りを矯正し学習内容について習熟・強化することができる。

なお,形成的評価の利用についてはつぎのようなことが考えられよう。

児童生徒による利用 教師による利用
1, 学習活動の調整

連続する全学習を小さな学習単位に分けてより適切な準備をさせていくという方法で学習を調整する
2, 習得による強化

学習単位を習得したことが示されることによって効果的な報酬・強化となる
3, 問題点の診断

正答・誤答の項目を知ることによって学ばねばならないことや復習を要することを知ることができる
4, 矯正的学習の処方箋

テスト結果の診断的側面を用いて,自分の困難点を克服することができる
1, 教師へのフィードバック

教材や指導のプロセスの欠陥をとらえたり,生徒に生じている混乱や困難をは握する
2, 生徒の学力水準の維持

結果の記録をとっておき新しい学習者の結果を比べて水準を知り,質の維持をはかる
3, 総括的評価の結果に関する予測

形成的テストは学習単位についてのものであるが総括テストと重なりがあるのでその結果の予測ができる


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