福島県教育センター所報ふくしま No.19(S50/1975.1) -022/026page
(2) 嫌悪項目については,女子教員の担任年数が長くなればなるほど,女生徒の得点平均が下降の傾向 を示していることが認められた。このことは,女子教員に習った年月が長くなればなる程,女生徒 達は,"いやな場面"にそう遇した場合の反応が,より女性的になる傾向を帯びてくると推論される。
(3) 同情心については,男女生徒共に,女子教員によって担任を受けた年数が長くなるにつれて,得点 が高くなり,男性化する傾向が強く認められた。
特にこの傾向は男子生徒にいちじるしい。
(4) 恐怖心の項目については,一番顕著な差異が男女生徒間に認められた。すなわち,男子生徒につい ては,女子教員の担任年数が長くなればなるほど,得点が高くなり,男性化してくる傾向がみら れ,女生徒については,得点が低くなり,女性化の傾向がみられた。 以上は性度テストの中の5つの下位テストからの分析考察であるが,さらに,1―2年,3―4年,5―6年,1―3年,4―6年,中1―3年の6段階に担任年度を分割して女子教員の担任と児童・生徒の性度テストの得点平均を考察してみたい。2年間あるいは3年間に分割してそれを考察した理由は,小学校低学年,中学年,高学年,中学校とわけて考えてみて,いずれの時期に女子教員に担任された生徒が一番その性格変動を受け易いかを分析するためである。なお,現在の小中学校においては,2年間ごとのクラス担任の変動が一般化されており,この観点からの分析がより必要と考えられたためでもある。
表X
表Xから読みとるれように,2年きざみ別女子教員担任年度単位の生徒の性度テスト合計平均変動は,小学校低学年において女子教員に担任を受けた男子生徒より,高学年になって女子教員に担任を受けた男子生徒の方が得点が高く,女子生徒については,高学年になってから女子教員に担任されたものの方が,低学年に女子教員に担任されたものより得点が低く,より女性化している傾向が目立つ。しかし,3年きざみで,中学校までを含めて分析をした場合には,男子生徒,女子生徒のどちらも中学校に入ってから女子教員に3年連続でクラス担任を受けたものが,いずれも急激な男性化現象を示していることが認められた。しかし,本研究のデータでは,中学時代3年間にわたって女子教員に担任を受けたものは,男子15名,女子12名と極端に少なく,ここから結論を生みだすことは非常に危険であると言わざるをえない。さらにこれらを5つの下位テストに分けて分析し,推論を下せば次のようになる。
(1) 男子生徒については,小学校高学年において女子教員に担任された場合,一般的にいって女生徒よ り 男性的性格形成に大きな影響を受け易い傾向があるのではなかろうか。
(2) 女子生徒については,小学校1―2年,3―4年,5―6年のいずれの時期に女子教員に担 任を受けても,女性的性格形成には影響を受けにくいと思われる。
(3) したがって,小学校低学年により多くの女子教員を担任として配当し,高学年になるに従って男子 教員を担任として配当することが望ましい。 III 結論
近年,学年始めになると,きまって,「男の生先が担任になってよかった」とか,「女の先生が担任になってがっかりした」とか,という会話が子供の母親の口からよく聞かれる。一体,本当に女子教員は男子教員に比して質的に落ちるのだろうか。このことについては,諸般の点を総合的に考えてみて否といわざるをえない。それたらば一体何がそのような言葉を母親たちに言わせているのだろうか。
第1には,母親対女教師―いいかえるならば,女性対女性の特有の感情―たとえば相互を見るきびしさが,それをもたらすものと考えられよう。
第2としては,日本独特の男尊女卑の風潮がまだまだ根強いことである。
第3には,分析の項で指摘したとおり,学校経営のまずさ,すなわち,女子教員の担任配当,学年配当,校務分掌配当などのまずさや,教科担任制の未実施,ティーム・ティーチングの未実施,さらには児童・生徒のクラス分けの非科学性などがその原因と考えられよう。したがって,これらの諸条件の改善こそが,今後の教育界の教授組織―学年・学級,担任制の面における最適化を図るための一つの目標となる。
終わりに,この小論では,研究計画の不備,性度テストの信頼性の問題,資料の不足などが重なり,満足すべき考察をすることができなかったが,今後の追試研究として,女子教員と男子教員によって授業を受けた児童生徒の教科別得点の差異,特に理数科系の教科の差異や,父兄の女子教員に対する価値観の分析などを行い,より完全な研究としていく計画のあることを記述しておく。