福島県教育センター所報ふくしま No.20(S50/1975.3) -004/026page
つ以上の項目などを比較しながら,傾向や特徴をは握し,統計的茂関係を見出すように努める。
ところで,統計は,いろいろな主体によって,さまざまな方法で作成されており,制約や条件などもあるから統計数字を見るときには,吟味しながら,やや批判的にながめることが必要である。
1 比率については,分母・分子のそれぞれのもつ意味をよく検討する。
2 実数でみたり,割合でみたりする。
3 指数については,その作成法や基準時にじゅうぶん注意する。
4 量的な分布については,平均だけでなく,標準偏差もあわせて見るようにする。(4) 統計グラフに記入すべき要素
統計グラフにはいろいろな形式があるため,統計表のように,各部分に一定した呼称はないが,少なくとも次の諸要素を記入する必要がある。
表題・時期・場所・単位・資料の出所,場合によっては凡例も必要である。これらのうち, 表題・時期・場所は欠くことのできない要素である。なお,資料の出所の記入位置は,グラフ欄外下左とするのが国際的原則である。
4. 統計資料利用上の留意点
既製の統計資料を利用するうえでの,おもな留意点として次のようなことがあげられる。
(1) 学習の目的に応じた使い方をするように指導することがたいせつである。何を知ろうとし,何を確かめようとして統計を使うのかを,はっきり考えて統計を使うことを指導しなけれぱならない。その目的によっては,1つの統計やグラフからだけではじゅうぶんな結果が得られず,いくつかの統計やグラフを併用しなければならない場合もある。
(2) 学習に利用しようとする統計の性質をよく知って指導することがたいせつである。目的に応じて,統計を便おうとしても,その統計そのものの性質をよく知っていなければ正しい使い方はできない。もちろん,この点については,児童にむずかしい統計を説明することは不可能であり、またその必要も狂いが,少なくとも教師は,その統計が何を目的として作製されたものであるか,調査対象の範囲は,調査の時期はどうなっているかなどを読みとり,特に児童に利用させた場合に,読み誤りやすい点はないかどうかを確かめておく必要がある。
(3) 統計の限界についても,じゅうぶん認識したうえで指導を進めることがたいせつである。一つの統計資料が語る事実というものはそういくつもあるものではない。その統計資料が語っている事実や範囲を越えた読みとり方をしたいことがたいせつである。たとえば,国鉄の蒸気機関.車・電気機関車の推移を示すグラフを見て,1952年ごろから電気機関車が次第に多くなり,そのころから蒸気機関車の数は次第に少なくなってきたという事実を読みとるところまでは正しい。しかし、そのように変わってきたのは電カのねだんが安くなったので,国鉄では電気機関車をふやしたのだときめることはできたい。その資料の限界を正しくとらえた読みとりをすることがたいせつである。
(4) 結論を先に出しておいて,それを証明するのに都合のよい資料だけを用いるのではなく,資料に基づいて推論していくことである。先行するのは結論ではなくて,あくまでも仮説であって,仮説は資料によって検証されなければならない。
(5) 統計資料を単独に扱うことなく,他の資料(たとえば,読み物,二写真,スライド,地図,分布図,年表など)との関連を生かして指導することがたいせつである。内容を具体的に,実証的に指導しようとして統計資料が利用されるのであるが,統計資料は元来数位をもとにしているのであり,やはり抽象性の強いものである。
ある統計から読みとったことがらを,分布図におきかえて,地域的分布の特色を理解したり,年度別統計と年表を考えあわせて,ある事象が推移してきた原因を知るなど,統計と他の資料と関連づけて多角的に利用することがたいせつである。
(6) 統計資料を見ることになれさせることもたいせつである。他の資料を見たり作ったりするのと同じように,統計資料も,いろいろなタイブのものに数多くくり返しふれることも必要である。そのためには,授業を抽象的なことばで流さずに,適切な統計資料を適宜使いながら,その統計資料がどのような働きをしているか具体的に学ばせるのである。
(7) なまの統計表からグラフや統計地図などを児童たちに作成させる機会をもつこともたいせつである。つまり,作業学習の中に統計表をつかって児童たちが,自分のカで図を作るよろこびを与えることである。計算したり,グラフや統計地図を揃いたりしながら考えたことをメモさせる。こうした作業を通して,児童たちに創造するよろこび,考える楽しさを味わわせることができるのである。
おわりに
いずれの場合にもたいせつなことは,教科書に掲載されているようた手近にある統計・グラフをできるだけ活用することで,「この統計やグラフをあとで見ておきましょう」というような指導にならないよう,じゅうぶん注意したいものである。
紙数の関係で,詳細を欠いた面があったり,各種の統計グラフ作図の基本や統計資料を活用する児童の能カの評価について述べることができなかった点については,いずれ機会をみて稿をおこしたいと考えている。