福島県教育センター所報ふくしま No.20(S50/1975.3) -005/026page
反応分析装置による学習指導の個別化
第1研修部 阿部昭生
1. はじめに
反応分析装置(アナライザ)が教育機器としてはじめて市販されたのは,昭和39年である。他の教育機器にくらべれば,歴史はかなり浅い。それにもかかわらず,ここ数年の普及ぶりはめざましく,福島県内でも表1から推定すると4〜5校に1校の割合で設置されているものと思われる。値段の高い反応分析装置がこれだけ設置されていることは,この機器に対する期待の大きいことを示していると思う。
表1 県内小中学校における反」芯分析装置設置状況 (1974)
学校種別 調査校数 設置校数 設置率 小学校 56 10 17.9% 中学校 49 14 28.6% 反応分析装置は、もとは集団心理検査(アメリカ)や映画の反応調査など集団の傾向をとらえるのに使われていた。だから,教育機器として開発されたときも,そして現在も,本命はやはり集団の傾向を分析することである。そのために,プログラム学習を推進する人の中には,この機器を授業で使用することに反対する人もいる。
ところが,反応分析装置は,学習者ひとりひとりの状況をとらえるのにもすぐれた機能をもっている。だから,この機器をじょうずに用いれば,学習指導の個別化にかなり役だてられると思う。そこで,このことについて考察してみようと思うのだが,それは「学習指導の最適化」への1つのアプローチにもなると思う。
一斉指導の中で個別化をはかるには,学習者全員の学習意識を高めることと,学習者ひとりひとりの状況をとらえてそれに応じた適切桂指導の手をさしのべることが必要であろう。以下は,この2つの面から反応分析装置の機能と使い方を吟味してみることにする。
2. 反応分析装置の便用と学習意識
(1) 学習意識を高める反応分析装置の特性
反応分析装置を用いた授業では,学習者の緊張度が高く,しかも,興味をもって学習しているといわれている。このことは,表2からもいえる。表2は,福島市内のある中学校で社会科の授業について調査したものであるが,おそらく,教科や学校種別が変わっても同じような傾向を示すものと思われる。
表2 反応分析装置を用いた授業の生徒の感想 (1975・1)
次に,これらの原因を考えてみようと思う。
緊張を高めている原因としては,次のことが考えられる。
1 学習者と教師が1対1の関係にある
反応分析装置を用いない授業では,学習者がひとりだけの立場に立たされることはあまりない。挙手による反芯の場合も,周囲に合わせて行動できるし,自信がなければ手をあげなくとも済まされる。多くの場合集団依存が可能であるから,とくに緊張することはない。ところが,反応分析装置を用いている場合は,周囲のことはわからないから,学習者にとっては自分ひとりだけの立場に立たされていることになる。しか