福島県教育センター所報ふくしま No.20(S50/1975.3) -008/026page

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 高校教材

   アルコール発酵の定量実験の工夫

       効果的実験方法の検討を中心として

                          第2研修部 平山 宏

 1. はじめに

 高等学校生物Iの教科書を調べてみると,10杜のうち6社が呼吸の実験にアルコール発酵を取り上げている。そのうち,1杜は試験管にT字管と血沈用ピペットを取りつけた発酵用定量装置を用いており,2社は試験管2本にU字管をゴム管で取りつけた装置で,どちらも気体の体積の増加量を細かにグラフ化している。あとの3杜は,キューネ発酵管を用いるが気体の増加量を測定するにはおおまかで対照と比較する程度で,定量よりも,生成物質を調べる定性的実験の方が主になっているようである。キューネ発酵管は他の装置とくらべて,ゴム管・ガラス管・ゴムせん等の付属器具を必要とせず,管部を傾けるだけの操作で実験を進めることができるので大変便利である。しかし,球部に空気が入っているので,無酸素の状態で呼吸を行っているといえないのではないか。キューネ発酵管と比較して,注射盤は、空気との接触を完全に断つことができるので,無酸素の状態で呼吸の実験が行えるので便利だ。さらに実験方法を検討してみると,酵母菌は入手しやすい乾燥酵母を用いて行っているのが多く,酵母の量とか、基質となる糖の濃度,温度条件等をみると,はたして1時間の授業で完全に終了できるのか疑問である。また,キューネ発酵管では発生する気体の定量が納得のいくよう狂データにならないことがあって,かわりに注射器を用いて定量実験を行ったところ,割合によいデータを得ることができたので,その実験方法や,実験上の留意点などを紹介するとともに,その注射器を用いて,圧搾酵母(生酵母)と乾燥酵母の発酵量の違いや,圧搾酵母を保存しておいた場合の発酵量の減少などについて実験を行ってみたので述べてみる。

 2. アルコール発酵の定量実験

1 ねらい培養液の濃度と温度条件を一定にして,酵母の種類や量,圧搾酵母(生酵母)の保存期間の違いによって発酵最(C02=ml/分)がどのように変化するのか定量的に確かめてみる。

2 準備 パン酵母,市販の白砂糖,ビーカー.乳鉢,ガラス棒,注射器,ゴムせん,メスシリンダー,上皿天秤,湯せん金,司(ウオーターバス)加熱装置,恒温器

3 方法

1) 発酵液のつくり方

 10%ショ糖液100皿召に圧搾酵母10gの発酵液をつくるには,蒸留水40mlに白砂糖108の割合で煮沸させて溶かした砂糖液(以下ショ糖液と呼ぶ)を50mlビーカーにとり,蒸留水50mlに圧搾酵母溶かした酵母液を混合してよくかくはんする。

写真一1
写真1

2) 装置と手順

写真一1の写真1ように,50ml用注射器を発酵液につけ,液を25ml位吸い上げてから注射針をつけて,気泡を押し山して液量が20mlになったら,針をゴムせんに刺して,40℃の温水の入ったビーカーにセットする。(写真一2)

 しばらくすると気体の発生がみられ,発酵が盛んにな

写真一2 写真一3
写真2 写真3


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