福島県教育センター所報ふくしま No.20(S50/1975.3) -010/026page

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と,AとD,BとE,CとFが大体同じ角度をしていることは,発酵量が同じではないかと推量できる。前述の乾量計算からみると,乾燥酵母は圧搾酵母の約1/2の発酵カをもつと考えられる。従って実験を行う際には,圧搾酵母の10gは乾燥酵母の7gと同程度の発酵力をもっていることを使用の基準とすればよい。短時間で実験を終らせようとするには,乾燥酵母より圧搾酵母を使用するのが最もよいと思う。しかし,長期問の保存が困難であることと,パン製造業者から入手しなければならないことに難点がある。乾燥酵母の方は発酵が弱く,発酵が盛んになるまで時間がかかりすぎることである。これは乾燥酵母が休眠状態にあるために,活性化されるまで時間がかかるためである。しかし乾燥させておけば長期間保存でき,薬店や食料品店でいっでも入手できるので便利である。短時間に実験を行うには,ショ糖液100mlに対し乾燥酵母は14g以上の割合で発酵液をつくればよいと思う。

 5 圧搾酵母の保存期間と発酵量との関係を調べる、10%ショ糖100mlに,15目間と30目間ビニル袋に入れ冷蔵庫に保存しておいた圧搾酵母をそれぞれ5g,10g,20g加えた場合に,発生した二酸化炭素量を計測したのが,表ー3,4である。圧搾酵母は冷蔵庫に入れておけぱ,実験に使用できる程度なら10日位もっといわれているが,実験結果からは保存目数が多くなるにつれて二酸化炭素の発生量が5mlになるまでの時間がだんだん長くなり,発酵量の数値も小さくなる。発酵カが弱まっていくと考えられる。これは酵母菌が減少するためか,休眠のために活性化が遅れるのか判断がむずかしい。しかし,ビニル袋に密封したまま冷蔵庫に保管すれば,温度条件が40℃なら,酵母量を多く(10%ショ糖液100mlに20g以上の割合で)すれば実験に使用できると思われる。

表3 保存圧搾酵母(15日間)の量と発酵量(CO2ml/分) 40℃
 CO2発生量(ml) 5 10 15 20 25 30 平均発酵量ml/分
圧搾酵母5gの所要時間 7′50″ 11′15″ 14′25″ 17′30″ 20′15″ 23′05″ 1.6
  〃 10g  〃  4′20″ 5′40″   8′35″   11′45″ 3.4
  〃 20g  〃  3′20″ 4′10″   5′40″   7′15″ 6.2
表4 保存圧搾酵母(30日間)の量と発酵量 40℃
 CO2発生量(ml) 5 10 15 20 25 30 平均発酵量ml/分
圧搾酵母5gの所要時間 9′30″ 13′40″ 17′55″ 21′00″ 23′55″ 27′10″ 1.4
  〃 10g  〃    6′45″   9′45″   12′20″ 3.6
  〃 20g  〃    4′55″   6′45″   8′30″ 5.7

 6 乾燥酵母の酵母液放置時間と発酵量との関係を調べる。

 乾燥酵母は,表ー2で3.5gの場合には二酸化炭素の発生量が5mlになるまで18分もかかっている。これは酵母液をつくってすぐショ糖液と混合して,実験を行うため,酵母菌が休眠状態からまだ活性化されないためと解釈できる。そこで,乾燥酵母3.5gと7gの酵母液をつくり,それを40℃の恒温器に30分ないし60分放置したのち,発酵液をつくって,実験を行い,二酸化炭素の発生量を計測して,横軸に時間(分),縦軸に二酸化炭素の発生量(ml)をとってグラフにしたのが,図ー3で,ここには,比較の意味でD,Eも加えた。

図3 乾燥酵母の酵母液放置時間と発酵量
図3 乾燥酵母の乾燥液放置時間と発酵量

 図ー3のグラフから,発生する二酸化炭素が5mlに達するまでの時間は,7gと3.5gの場合いずれもE,D,にくらべて早くなっており,特に酵母液の濃度が低いほど顕著である。また発酵量も増していることは発酵が盛んに行われるようになったことを示している。実験結果から乾燥酵母が休眠状態から活性化されるまで30分以上あればよいと考えられる。乾燥酵母を用いて短時間に効率よく実験を行うには,酵母液(蒸留水50mlに酵母7g以上の割合で溶かす)をつくって,40℃の恒温器に30分程度放置しておいたものを,実験時に使用するなどの配慮が必要である。

 3. おわりに

 以上,アルコール発酵の定量実験として,50ml用注射器を用いて,市販の白砂糖10%液で,40℃における酵母の種類や量,圧搾酵母の保存期間,乾燥酵母の酵母液を作って放置した時間の違いによって,発酵量(CO2ml/分)がどのように変化していくのか,データをあげて,短時間に効率よく実験を行うための酵母量や実験の工夫等について検討してきた。とかく基礎的実験となると安易に取り組みがちであるが,実験器具や実験方法等についての工夫改善の方法がないものかどうか検討してみる必要があるのではないだろうか。


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