福島県教育センター所報ふくしま No.21(S50/1975.6) -005/025page

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    英語科指導上の留意点

           〜わかる指導をめざして〜

                          第1研修部 鈴木 均

 1. 四技能の調和

 明治の初期に英語教育が,わが国の公教育の中にとり入れられて以来,その指導のあり方について,いろいろの論議がたされてきたが,そこに底流する二つの考え方は,「実用面」を重んずるか,それとも,「教養面」を重んずるかであった。

 しかし,これらの論争を行っていた人々でも,四技能(聞く・話す・読む・書く)のあることは認めていた。しかも,そのうちの一技能だけを発達させるべきと主張した人はだれもなく,みな四技能の調和のとれた発達を願っていた。

 そうだとすれば,この論争の原因は,教材または教材の取り扱い方にあったのであり,もはや本質的な問題ではなく,英語教師はこの四技能の調和のとれた発達をめざして指導の改善に努力すべきであろう。

 “What are you doing, now?"という教師の問に,生徒達が,“We are learning Eng1ish,now."と答えたときの“learn"とは一体何を意味しているのか,ちなみにCODを調べてみると,1earn=get knowledge or skil1 と定義されていた。おそらく生徒達は,意識はしていないかも知れないが,英語についての知識や技能を身につけているのではたかろうか。

 話は古くなるが,明治34年(1901年)に初めて制定された「中学校令施行規則」の中の外国語教授の要旨においても,「外国語は普通の英語,独語または仏語を了解し,これを運用するの能を得しめ稚ねて知識の増進に資するをもって要旨とす」とあり,理解(recognition;聞くこと・読むこと)と運用(production;話すこと・書くこと)の両面についての指導を通し,四技能の伸長を計るべき必要性をといている。

 2. 言語活動

 「言語活動」がクローズ・アップされていらい,数年がたつ。その間,言語活動についてのとらえ方や実践報告なども数多く出されたが,それらを総合して,言語活動について理解に達したことは,学習活動をもふまえた上での言語活動(from pedagogic behaviorto language behavior ; from manipulation to communication)であるということである。

 学習した英語は,その段階ですぐに使用し,活動させ,しかもその活動(action;behavior)を通しながら学習をを進めていくという態度がこれからわれわれが目ざしていく英語指導(teaching Eng1ish as human behavior)には必要となってくる。そのためには,英語の実際の使用につながるように,発音・単語・文型・文法などの要素的知識を総合し,生徒に四技能の活動を実際におこなわせるように努めるべきであろう。

 また。習った英語をすぐに使わせるということは,生徒に成就感を味あわせ,学習への興味づけをしていくという学習心理学上の意味からも重要なことである。

 ともあれ,「学校の英語は将来に役立つ英語の基礎であるから,すぐには使えなくともよい」という従来の考え方には反省が加えられなければならないであろう。

 3. わかる指導

 英語学習の過程は,一般に,観察(observation)→認識・理解(recognition)→模倣(imitation)→反復(repetition)→運用(production)という一連のサイクルの連続である。

 英語学習において,「わかる」ということは,この観察→認識・理解までの第1段階的な理解と,さらに進んだ認識・理解→運用までに至る面についての第2段階的な理解が含まれている。

 上記のことを,Websterの"understand"の項に示された定義を用いて述べるならば,“to grasp themeraning" (第1段階的な理解)から“to have thorough or technica1 acquaintance or expertness" (第2段階的な理解)へすすむことを意味している。すなわち,意味・内容の理解から,理解・知識(acquaintance)と技能とが統一的に体得された真の理解へとすすむことになる。

 さて,それでは,わかる指導を構成するための中心的な要素は何であるかを考えてみたい。それは次の7つに一応しぼることができよう。

 (1) 生徒にとって学習目標が明確であること。
 (2) 目標までのステップが系統化されていること。
 (3) 「わかる」ための回路を多くしておくこと。
 (4) ひとりひとりに対してのフィード・バックを考えること。
 (5) 生徒が成就感をもてるように,いろいろな答えを認めること。
 (6) 教具・機器を適切に導入し,視覚化・聴覚化をはかること。
 (7) 外国の風俗・習慣についてもふれること、


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