福島県教育センター所報ふくしま No.21(S50/1975.6) -007/025page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

 (5) 正解の多様性

 正解はただ一つであると思い込むことは,危険であり,また生き生きとした言語活動の展開の妨げにもなる。

 たとえば, I don't know how to skate. I want you to help me. I wonder if you like fishing. は,それぞれ, I can't skate. Will you help me? Do you Iike fishing? とほぼ同じ意映である。表現形式や語いや正確さは違っていても,表現しようとする内容が汲みとれる限り,いろいろな、答えを認めるという態度をもちたい。

 また,このような態度は,常に平易な基本的な文型や語いを用いて,まず表現をしてみようという態度の養成にもつながり,生徒の学習意欲を喚起することにも役立つものである。

 たとえば, a house whose roof is red, It's ten years since our schoo1 was built. も結構であるが,a house with a red roof, Our schoo1 is ten yearsold. にも目を向けさせれぱ,正解への回路も多くなり,英語に弱い生徒でもやる気を起す機会がもてるようになろう。

 (6) 音声面の指導

 四技能のうち,「読む」ことについての指導の工夫は,ある意味では比較的に取りくみ易い面もあって,それなりの効果をあげつつあるが,他の三技能,とくに「聞く・話す」については,これからの指導の改善にまつところがまだまだ多い。

 幸い,テープ・レコーダーの使用は常識になっており,LLの設置についても真剣な討議がなされ。すでにその活用の段階に入っている学校もかなり見うけられる。これらの教育機器の活用については,今後とも多面的な研究をつみかさね,実りあるものにしなければならたいが,ともかく,生徒達が従来にくらべ,比較にならたいほどnative speakerの音声には接しており,教師が想像している以上に「聞き・話す」ことには興味をもっている。教室は,生徒にとり英語による言語環境を構成し得る最も貴重な場であり,このような言語に対する基本的な興味にこたえるよう,聞く・話す活動を計両的に導入し,実践していきたいものである。

 ここで音声指導上の留意点を文強勢を中心にして簡単に列挙しておく。(「所報」第2号を参照ください。)

 1 英語のリズム日本語のリズムの相違を知る。すなわち,前者はStress-timed rhythmであり,後者はSy1lab1e-timed rhythmである。
 2 文強勢がどこにあるか的確につかむ。
 3 強勢のある音節は大きく長めに発音する。
 4 第1強勢をもつ語,および第1強勢をもつ語を含む語群は,まとめて発音され,1つの音声上の句(Phonological phrase)をつくる。たとえば, This book will be our text.という文は,textにのみ第1強勢をおけば,文全体が1つのphono1ogicalphraseとしてひと一口、で発汗され, bookとtextにそれぞれ,第1強勢をおけば,2つのphonological phraseとして, This bóok  /  will be our téxt. となり,ふた息で発音される。
 5 1文の中で, phonologicalphraseは,不必要に多くとらない。
 6 phonological phrase が2つ以上ある場合,その間におく休止(pause)は短かめにする。
 7 強勢をうけない語で,弱形(weak form)と強形(strong form)がある場合には弱形を用いるようにする。たとえば, Clàss has begún. hasは[hæz]とせずに 発音 又は 発音 とする。
 8 (`+´),(´+`)stress pattern に注意する。たとえば, whìte shírt, tòo hót, gèt úp, whàt tíme ; nóotebòok, mí1k bòttle など。
 9 第1強勢をうける音節の高低(pitch)は,下降調(右下がり→)と文の途中の切れめなどに起る継続維持調(→)のphono1ogical phraseの中にあっては,high pitch となり,上昇調(右上がり→)のphonological phraseの中にあってはnormal pitchとなる。
 10 音声上の結びつき(linking)は,リズムに関係が深いので注意する。

 (7) 文化面の理解

 人物や文化の交流が盛んになってきたとはいえ,外国の文化はわれわれの文化と異なる点が多い。この文化の相違点が理解活動の障害になることがある。例えば、“Every Friday night, Jack's mother gives him some money. He sometimes has a date with Janeat the drugstore. He pays for their food."という文章の中だけでも,週給制,週5日制,drugstoreはくすり屋であるばかりでたく,小問物も売り,軽い食事もできる店であること,さらには米国の中学生男女のつき合い方などもうかがえるのであるが,これ等の風俗・習慣・文化面などについての理解を深めるための補足的な指導も大切なものになろう。

 以上,わかる指導をめざしての英語指導上の留意点をのべてみたが,唯一でalmighty狂指導法はない。また,あまり指導法を変えることは,生徒の理解を妨げることにもなりかね液い。教材と生徒の能力や実態に応じて指導を構成する要素とを最適に組み合わせて,生きた英語にふれさせながら学習を展開していくのが最善の道となろう。

 最後に,L.Throneの言葉を引用しておきたい。

 “If you want to teach somebody a 1anguage,then you simply soak him in it in every possible way."


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。