福島県教育センター所報ふくしま No.21(S50/1975.6) -008/025page

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中学校教材

  観測データをもとに思考させるためのモデル利用の一例

   〜地球の自転・公転,および月の公転の指導を中心に〜

                          第2研修部 渡辺専一

 1. はじめに

 天体領域の指導は,観測するための時刻がおもに夜間が中心となること。日中(特に太陽を中心とする)の場合の観測でも,その時間がかなり必要とすることなどの理由で,各学校では,かなり苦労しているときいている。

 また,学習の対象そのものも,『地球』というそれ自体か運動する物体の上におりながら,他の天体の動きを調べようとするのであるから,一層,生徒の思考を混乱させてしまうのである。

図ー1天体運動モデル製作図 図ー2星座位置固定板 図ー3方位表示板
図ー1天体運動モデル製作図
図ー2星座位置固定板
図ー3方位表示板    (図中の数字はmm)

 このような実態を見るとき,天体指導においては,特有の指導方法を設定しなければならない。

 そこで,私は基本的に次の二つの事項を,常におさえておけぱ,かなりの指導効果があると考えている。即ち

 1 各天体(太陽・月・地球・星など)を観測する場合も,その結果を処理する場合も,それぞれの天体を各固別々に扱わず,常に関連的に学習することが特に重要である。たとえば,月の出の時刻とその位置を観測する場合,その時太陽はどの位置にあるのかをおさえておく必要がある。このことが,最終的に天球という概念を正しく把握するに通ずるのである。ややもすると,月の形の変化そのものの現象は理解していても,太陽を含めて考えさせると全く混乱してしまう生徒が多いものである。

 2 次に観測結果のデータを分析・検討するにあたってモデルの効用を忘れてはならないと思う。

 モデルの効用の一般論はさけるが,特に天体現象を思考するには,いずれも遠距離にあるために生徒達が直接手を触れ,解明することが困難である。天体領域では特にこの理由でもちいられるわけで,データにもとずいたモデルの構成が特に要求される(あくまでも,生徒たちが観測によって得たデータを生かすことが重要)。

 ここでは前述の1, 2 を基本にしながら具体的に指導の過程を追って述べてみたい。

 2. モデル製作の一方法

 指導上理解に困難な内容は特に次の3点をあげることができる。即ち

 1 太陽が年間を通じて,西側から南の空を通り東側に動いていくこと(年周運動)によって,見える星座が違うことの理解。
 2 月の公転によって,毎目出没する時刻がおくれることの理解。
 3 惑星の順行や逆行が起る原因の理解,などである。

 さて,実際の指導の場面を考えてみると,まず天体の観測によってデータを集めることに始まる。その結果,これらのデータをもちよって,それぞれの天体の相互の位置や運動の関係を理解するためのモデルの構成がおこなわれる。


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