福島県教育センター所報ふくしま No.21(S50/1975.6) -016/025page
調査5 お客さまがあった場合,湯茶のつぎかたはどんなにしたでしょう。
小・中生とも80%以上が,お客さまがいらっしゃったらお茶をつぐことができると語っている。特に男子より女子のほうが手伝うことが多いという。おいしい茶のつぎ方は,お茶の種一類によって茶わんにつぐ時間と温度もかわるが,ここでは煎茶や玉露を想定し,きゅうすについだ湯を1〜2分おいてつぐことを正答として結果をみた。きゅうすの湯を茶わんに「すぐつぐ」のは,女子より男子が地域の習慣に流され,ユガミがでている。6年生は「5年の来客の接待」で学習したのが生かされ,正答率が高いが,中学生は忘却も目立ってくる。
また,熱湯をきゅうすに「すぐつぐ」とき湯がきゅうすにはいらないことを経験する。つまり知識や技能の習得過程で実習されない場合,科学的理解がされず生きた学習がみられず,実践の再認識を強調しなければならない。
表2 (単位%) 学年 小5 小6 中2 性別 男 女 男 女 男 女 すぐつく 58.6 16.7 33.3 25.0 80.1 30.1 1分おく 37.9 40.0 40.0 70.8 19.9 69.9 2分おく 3.5 43.3 16.7 25.0 0 0 3分おく 0 0 10.0 4.2 0 0 調査6 2分間で縫う長さと平均
布はさらし木綿で50cmの長さのもの,2枚おりを準術した。針に糸通しをした後,糸はしに玉結びをし,用意始めで実施させた。結果は表3に15名抽出しあげてみる。
表3 本ぬいの長さ (単位cm) 学年 小5 小6 中2 性 男 女 男 女 男 女 1 12 16 35 19 19 30 2 ・10 19 33 ・16 24 15 3 24 20 32 28 19 37 4 21 17 16 24 27 42 5 26 ○26 27 18 25 35 6 31 ・5 25 20 27 35 7 ○32 13 29 ○39 26 29.5 8 29 26 ・15 21 20 ○47 9 12 8 ○40 34 ・16.5 29.9 10 20 23 17 20 26 ・13 11 21 33 23 21 24 30 12 22 23 34 ○39 32 31 13 19 19 22 27 ○47 25 14 18 9 25 28 22 18 15 13 24 27 19 19 22
※15名抽出 ○早い者 ・おそい者各児童針をもった経験は,全員“あり"で,男子より女子は早期に母親のまねごとをしている。しかし,一般に手ぬいにかけては,女子は長く縫うであろうという通念はくつがえされ,男女5年生では,変わりのないものとなった。だが,美しさとうまさという点から問題が残る。また本ぬいの早さのはやい者が美しくできているのが認められたが全部はそうとは限らず,遅くとも美しく仕上げる児童もいる。遅い子は,一般にやり方がわからない,作業手法になれていたい,縫った経験が少ないなどで,長さは,5〜47cmまでの個人差がでた。したがって,技能発達に大きな遠いがあるということが判明した。
5. むすび
「家庭生活の基礎技能の発達」にスポットをあてて眺めてみたが,現代の子どもの傾向は,時代の進展にともない成長の加速現象がいたるところに感じられる。技能の発達をみても時代の変化と環境が影響してか戦前と戦後の発達に相違点がある。(社会成熟度検査・S-M社会生活能力検査基準より)例えば小刀の使い方は発達の遅れた面であり,客の応待,電話のうけ答えは比較的早期に発達していると認められる。基準からのズレを,学年別に考慮した場合には,6〜7学年のひらきがあるようだ。したかって現在の子どもを理解するためには,基礎発達(身体的,心理的,社会的要因)をふまえてひとりひとりの子どもの実態をは握することが急務である。
つぎに児童・生徒の心身の発達には,大きなへだたりがみられるのは当然だし,ほとんどの子に同程度の技能を得させることは理論上可能だが,実際には教師の指導力と時間的制約から不可能に近い。従来は,性,年齢,地域から同一平均的見方にたって,児童生徒を取扱ってきたが,しかし今後は,各白の独白性や特殊性をみつめ,個人の価値と能力を尊重し,自己卑下や劣等感をなくす人間尊重の精神を高める学習のくふうが大事となる。
さいごに発達のサイクルと教育のサイクルの同調化をはかるために,前もって予想発達を描きながら,操作・働きかけを教師は行ない,発達に即応した技能学習をさせたいものだ。したがって,ひとりひとりの子どもの人間的理解のうえにたって,励ましと助言を与え,“創造を生かし学ぶ態度,,を技能学習の究極の目標としたい。
それが達成できるのは,現場教師のみが,可能なことではたかろか。