福島県教育センター所報ふくしま No.22(S50/1975.8) -003/026page
授業に関与している要素・要因は非常に多い。先にあげた教育機器のみが授業の構成要素ではない。教師や子ども自身もその構成要素であり,授業内容,教授方法,学習形態なども授業の要素であり,要因となる。これらの裏素,要因は独立したものではなく,互いに複雑に関連しています。授業目標を達成して,教育効果を高めるためには,要素,要因それ自身ならぴに,それらの間の関連を深く調べ(システム分析),実現したい授業目標の達成に対して,どの要素,要因の組み合わせにして用いるべきかを定めて(システム設計),授業を行ない(システム運転),絶えず,授業効果を評価して(システム評価),設計,運転を授業の流れにそって流動的に行なう必要があります。これが授業のシステム化です。
上の「授業のシステム化」は「ひとりひとりを生かす効率の高い授業」をめざすためのものです。したがって,ただ単に知識や技術を量的に多く,短時間に能率よく教えこむのではなく,精選された価値の高い学習内容を最も効果的な方法で子どもに学習させ,より多くの成果を得ることをめざしたものです。そのために授業をいろいろの視点から構成しなければなりません。
次に,このようた授業のシステム化を実際に実施するにあたって,まず,授業のシステムをじゅうぶん分析し,それを授業のシステムの設計に生かしていく手立てが必要であります。
このことの過程の流れを,具体的な小学校の教材をとりあげて,次に実際的な具体例を説明してみます。
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小学校第4学年教材「交通の発達についての指導」をとりあげる際,まず大切なことは単元目標の検討から,授業のシステム設計を考察しなければなりません。その単元目標をみると,「県内(都・道・府)や国内の各地を結ぴつけて,県民の生活を便利にしたり,産業に大きな影響を与えてきた交通が,今日のように発達してきた歴史的背景を理解させ,そこにはそれぞれの時代における新しい交通機関の出現だけではなく,先人のさまざまな努力があったことを考えさせる。」とあります。これをうけて,次のような具体的な目標をおさえたい。
1. 県内の交通の様子は,昔と今とで,大きく違っているが,これらの交通の変化は,人々の暮らしや仕事の変化と深い結びつきがあることを説明できる。
2. 江戸時代には,五街道を中心に街道が整えられたが,人々は,徒歩・馬・かごなどで旅をした。そしてその旅には,さまざまな制約や苦労があったが,これには,このころの世の中の様子が反映していることを指摘することができる。
3. 明治になってから,近代的な交通が始まったが,わが国の複雑な地形の条件を克服しながら,鉄道網が急に広まっていったことを指摘することができる。
4. 現代では,鉄道だけでなく,いろいろな交通が発達しているが,これらは近代産業と密接な結ぴつきをもっていることを説明することができる。
このように目標を分析し,学習の構成化として,次のような学習の構成図を設計してみた。
次にこの「学習の構成図」から「授業の構成図」を設計しなけれぱならない。その一例として,単位活動の「監視を強めるための関所や橋のない川を調べる」につ