福島県教育センター所報ふくしま No.22(S50/1975.8) -005/026page

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<教材研究の基礎>

算 数 科 に お け る 思 考 操 作 の 発 達 的 変 化 に つ い て

−学習に対する児童の興味形成を中心として−


第 1 研 修 部 津 田 俊 晴



1 はじめに

算数科の指導にかかわりの深い調査結果をみる。

(1) 文部省教育研究開発室の調査結果(1975年)

1. 形式的操作(大人並みの論理)が可能になるものは,小学校5年から6年にかけて急激に増大し,その後は,著しい増加は認められない。

2. 形式的思考操作の発達についての地域差をみるために,長野県下の小・中学校を地方群の代表とし,東京都の小・中学校を都市群の代表として両者を比較した。

・対象児(小学校3年生〜中学校2年生)の全学年にわたる一貫した差異は認められない。

・小学校4年と5年では,都市群の方が地方群よりも操作の発達がより進んでいる傾向がみられるが,その後両者ともほぼ等しくなる。

この傾向は,問題によって幾分違いがある。

(2) 福島県教育研究開発研究会の調査結果(1975年)

1. 関数の考えの発達的変化は,小学校5年あたりで急激になり,その後は緩慢な様相を示すと推定できる。

一方,ピアジェは,思考操作の発達段階の出現は,相対的に環埼条件と独立した心的過程の成熟によるということで,小学校2年〜小学校6年を具体的操作時期,小学校6年〜中学校3年を形式的操作時期と区分けしている。

したがって,調査結果とピアジェの理論から,具体的操作の成熟の時期が1年早くなり,小学校5年から形式的操作の時期に入るといえる。

このような発達的変化が連続であれ,不連続であれ,小学校1年から小学校6年までの変化の概略を知ることは学習指導上意味あることと考える。

そこで,手近な文献によって発達的変化の概略を推定し,その推定結果にもとづいて,学習に対する児童の興味形成のあり方を考察してみよう。

2 発達的変化の概略の推定

小学校1年〜小学校6年の概念形成についての実験結果をみる。

(1) 黒沢誠氏(岩手大学)の実験結果(1962年)

概念形成の心理学的考察においては,抽象化と一般化との問題を掘り下げる必要があるといって,概念形成の成立方式を能動的操作方式と受動的写像方式に分類して実験している。

1. 能動的操作方式(A方式)

・形成すべき概念の内在する事象を多数提示する。

・学習者は,これを能動的に,多面的な操作により探索する。

・一般的全体的観点に立って比較し,共通点を抽出する。

・体系的に総括し,内包的意味の概念形成のときは,条件を明らかにし,一般化して命名する。
命名の名称は指導者が指示する。

・指導者は,その数学的表現を明確に指導する。

2. 受動的写像方式(P方式)

・形成すべき概念の要素が,視覚的に明確に知覚できるものを提示する。

・指導者は,その提示したものを,学習者に比較せしめ印象づけ,思考させる。

・指導者は,比較したものから,共通点を抽出せしめる。

・抽出したものを総括し,内包的意昧の概念形成のときは,条件を明らかにし,一般化してその命名を指導する。

・指導者は,その数学的表現を明確に指導する。

3. 実験の結論

要因分析から,次のように結論している。

学 年 1年 2年 3年 4年 5年 6年
有効方式 P→A

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