福島県教育センター所報ふくしま No.22(S50/1975.8) -006/026page

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3年はP方式からA方式への移行期で,両方式を併用しなければ効果をあげることはできない。

3年から4年にかけてのP方式からA方式への移行は,知能の低い児童において急激に移行する時期があると予想される。

次に,思考操作と概念形成の関係について考察する。

(2) 具体的思考操作と形式的思考操作

具体的燥作と形式的操作との差異は,操作の形式からみると,具体的操作は類と関係の操作で,形式的操作は命題の操作であるといえる。

1. 例

「1こ25円のりんご7この代金はいくらですか」を児童が考える場合,具体的操作では,現実にあるりんご1こに,10円硬貨2枚と5円硬貨1枚をまとめて対応させ,りんご7この合併に対して,10円硬貨2枚と5円硬貨の組を7つ合併させる操作により,全体の価値をみいだすが,形式的操作では,1このりんごの表象を言語刺激から構成し,それに対して,25の経済価値を結合する。このとき,りんごの表象は容易に成立するが,経済価値自体は表象として成立しがたいので,文字などの言語形式を用いては握する。

そして,これには数の概念が伴うので,貨幣という現実の物をこえた抽象化が行われる。

操作の全体的な構造化がすすむにつれて内包も外延も明確になってくるといわれているので,概念は操作の構造化によって形成されるといえる。

2. 参考

ピアジェは,具体的操作の段階における構造を群性体(不完全群),形式的操作の段階における構造を群と呼んでいる。

3. 例

正方形という概念は,四つの辺の長さの関係,四つの内角の大きさの関係,ひし形,長方形,平行四辺形などの四角形の全体的関連のなかでとらえられる。

以上において,P方式は前操作的か,あるいは具体的操作の初期とみることができるので,前操作的時期は変わりなく2歳〜小学校2年頃までと考えることができる。

また,小学校3年あたりで具体的操作に急激に移行し,小学校4年で形式的操作の素地ができあがるとみてよいであろう。

したがって,思考操作の発達的変化は,次のように推定できるので(1−(1)−1(マル1),(2)),発達的変化の加速現象を認めることができよう。

図1
思考操作の発達的変化

3 発達的変化と興味形成

まず,学習結果の定着についての実験結果をみる。

(1) ディヴィット(David)の実験結果(1935年)

具体的な意味をもたない教材による学習結果の方が,そうでない教材による学習結果よりも早く,またより多く忘れられる。

図2
メラーの分析的授業モデル

これを,メラーメラー は児童の学習意欲を駆り女てる(興味形成の)ための方法の根拠としており,そして,それは児童にとっての具体的な意味であることを強調し,その教材の具体的な意味づけが児童にとってどの程度であるかは,一つ一つの体験に則して明らかにする他はないといっている。

そこで,もし思考操作の発達に地域差がないならば(1−(1)−2(マル2)),このような問題も思考操作の特徴からある程度明らかにできるのではないかと考えた。

次に,推定した思考操作の発達的変化と思考操作の特徴を対応づけてみよう。

(2) 思考操作の特徴

1. 低学年

低学年の児童の思考操作の特徴は,現実的感覚的な操作と自己中心性にある。

2. 中学年

中学年の児童の思考操作の特徴は,自己中心性から離脱して,第三者の立場で事物をみることができるようになることと,現実的実質場面における類と関係の操作にある。


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