福島県教育センター所報ふくしま No.22(S50/1975.8) -008/026page
小学校教材
ヒヨコのからだのつくりの観察
第 2 研 修 部 平 山 宏
1.はじめにヒヨコについては,1年で身近に見られる動物の特徴を理解させるための教材として,動物の動きかたやからだの形,えさの食べかたや好むえさがあること,だいたりしてあたたかいこと,また卵から孵化してヒヨコになることなどを観察させている。6年ではトリの卵は適当な温度や温り気,空気を与えると胚が成長しはじめること,さらに胚が成長するにつれて卵の重さが減り,内部では卵黄や卵白が使われて血管,心臓,目などができてやがてヒヨコになることを学習している。
この胚の成長のいとなみを,ヒヨコのからだのつくりやはたらきと関連させて学習をすすめるならば,より一層生命現象のすばらしさを統一的に理解させることができるのではないだろうか。
そこで,小学校でヒヨコの解剖を取り上げて,からだのつくりを観察させることは,からだの諸器官が相互に関連してはたらきあっていることをより具体的に理解させる上で重要な意味をもつと思われる。
ここに,雌雄鑑別済みのおすのヒヨコを飼育して外部形態や内部形態について調べたこと,および体重の変化と消化管や卵黄のうの変化との関係についても少し調べてみたので述べてみたい。
・器具およぴ薬品
解剖用具一式(はさみ,ピンセット,メス,柄付針,ルーぺ,虫ピン)・解剖ざら・解剖顕微鏡・麻酔ぴんまたはガラス器・脱脂綿・上ざら天ぴん・シャーレ.ものさし,クロロホルムまたはエーテル,0.9%生理食塩水
・麻酔のしかた
ヒヨコを麻酔ぴん(ガラス器でもよい)に入れ,ごく少量のエーテル(クロロホルムでもよい)を脱脂綿にしみこませたものを入れて密閉し,5〜10分後呼吸がとまったら取り出して,まず外部の形態観察からはじめる。
2.外部形態の観察(1)麻酔する前に,手のひらにのせ傾けて平衡の感覚や,明暗での目のようす,まぶたの動き,運動のようすを調べておく。
◎手のひらにのせて上下に傾けると,あしを折り曲げてからだを低くして,くぴを持ちあげたりさげたりしてバランスをとっている。また手を急に下におろすとつばさをひろげる動作をする。
◎目のひとみは円形で,明るいところを見ると小さくなり,暗いところを見ると大きくなって,目に入る光の量を調節している。
◎目を閉じるときは,上まぶたは動かずおもに下まぶたを大きく動かす。
◎歩くときは2本のあしを交互に動かし,走るときはくぴを前にのばしつぱさをひろげ上にあげて走る。全体がちょうど流線形のようになる。
(2) 麻酔したもので,全体のようすを観察し鳥類の外形上の特徴を調べる。
◎ふ化してから2〜3日は全身黄色の毛でおおわれて羽はない。肛門の腹側に卵黄のうがからだにすっぽり入ったあとの傷あとがみられる。4〜5日たつと,つばさの先の方から羽が生えはじめてくる。14〜15日で羽が出そろうがまだ小さい。
◎からだは頭・くび・胴・つばさ・尾部・あしからできている。
◎とぶための役目をしているつばさや,空気の抵抗をできるだけ少なくするため全体が流線形になっている。
◎風雨からからだを保護し体温を保つため,全身が羽毛でおおわれている。
◎どこにでもとまって休息できるように,あしのつめが特殊なしくみをもっている。
◎つばさの面積を広くしかも軽くするために,つばさには特に大きな羽がはえている。
◎尾部の背面に脂せんがある。羽が出そろってくると,くちばしでここから脂肪をとり,羽毛にぬって羽毛が濡れないようにしている。
(3) 頭部の各器官を観察する。
◎目には上下のまぶたがあり,ひとみは円形である。
◎鼻孔(外鼻孔という)はくちばしの基部のところにある溝である。図−1
1.とさか 2.外鼻孔 3.くちばし 4.目 5.上まぶた 6.下まぶた 7.耳
◎さきのとがったくちばしをもち,くちぴる・歯がない。くちばしを大きく開くと,口腔の下側に舌があり,舌の後方が咽頭で気管や食道に連なる。口腔の上面にみぞ状の内鼻孔がある。図−2