福島県教育センター所報ふくしま No.22(S50/1975.8) -010/026page
ふ化直後のヒヨコでは小腸のほぽ中央に大きな卵黄のうがついているが,日数がたつにしたがって次第に小さくなって消失してしまう。
つぎに消化管を切開して,餌がどのように消化されているかをみる。そのうでは餌と同じく大小の粒がみられるが砂のうではやや小粒で同じ大きさになっている。十ニ指腸ではとろとろした液状となり,小腸前半では水分が少なくなってねちねちしており,小腸後半ではさらに水分が少なくなって固形化しており,直腸ではふんと同じになって水分はなくなってくる。写真−1
つぎに切開したそのうをみると細かいしわがあり,前胃では小さなまるい突起が多くみられ粘液を分泌している。砂のうでは深いひだがある部分とひだがない部分とがあり,内壁はかたくてやすり板のようである。写真−2
鳥はそのうに餌を貯蔵し,砂のうで餌を細かくして消化を助け(機械的消化),おもに十ニ指腸,小腸で消化吸収が行われて,そのかすがふんとなっている。3. 呼吸器官の観察
消化器官を取り除くと,呼吸器官と排出器官がみえるようになる。くぴのところに長い気管があり気管が左右の気管支に分かれるところにやや細かくなっている鳴器がある。ここに鼓膜と呼ばれるヒヨコの発声器がある。図−8
1 気管 2 気管支 3 鼓膜
気管支から肺につながっており,肺は赤色海綿状の組織で背側にはりついているのではがして観察する。
ヒヨコが鳴くのは肺から吐き出す空気が鳴器の鼓膜を振動させるからである。
気管支は肺に入るとさらに分れて,最後には毛細気管支となり末端は薄膜となる。
4. 排出器官の観察
肺を取り除くと脊椎骨の両側に1対の暗赤褐色をした長い腎臓がみられる。前・中・後葉の3葉に分かれている。腎臓を取出すことは困難なのでそのまま観察する。腎臓の上方に黄色の副腎がみられる。ぼうこうはない。
4.体重変化と消化管・卵黄のうの変化との関係孵化したばかりのヒヨコを2つのダンボール箱に20羽ずつ入れ,金網をかぶせて室内で加温せずに,Aは水とえさを与えて飼育し,Bは水もえさも与えないで飼育して,それぞれ4羽ずつ解剖して体重と消化管・卵黄のうの変化について調べた結果を表わすと表1と写真−3のようになる。
表1 体重変化と消化管・卵黄のうの変化(平均値) 餌の有無 孵化後の時間
体重・消化管・卵黄のう
5 51 124 A 体 重(g) 38.3 40.0 39.7 消化管の長さ(cm) 48.2 65.9 67.0 消化管の重さ(g) 6.1 8.3 8.7 卵黄のうの大きさ(mm) 30×24 16×13 6×4 卵黄のうの重さ(g) 3.25 0.75 0.40 B 体 重(g) 41.6 35.6 31.4 消化管の長さ(cm) 51.2 50.8 56.0 消化管の重さ(g) 7.2 7.0 6.3 卵黄のうの大きさ(mm) 31×26 20×17 15×13 卵黄のうの重さ(g) 3.85 1.42 0.68
※消化管の長さはすい臓と腸間膜をはがし,折れ曲っている十ニ指腸をまっすぐのばして側定した。
※消化管の重さは肝臓・すい臓などつけたまま測定したあと,卵黄のうと消化管の内容物の重さを測定して差し引いた値である。
※えさを与えない方は孵化124時間後には全部死んでいた。
◎孵化後も卵黄はヒヨコの発育や呼吸に使われていることがわかる。
◎えさを与えた方が消化管の成長が著しく,消化管に多くの血管が分布している。
5.おわりに身近かでかわいい動物を解剖してからだのつくりを調べることは,生命尊重の面から問題はあろうが,生命現象をより具体的に理解させるにはどうしても必要であるように思う。
飼育中に死んだヒヨコなどを,ぜひ解剖して内臓のようすを観察させてほしい。