福島県教育センター所報ふくしま No.22(S50/1975.8) -014/026page

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英 語 指 導 と 視 聴 覚 教 材 の 活 用

−音声教材を中心として−


第 1 研 修 部 吉 成 尚 武



はじめに

中学校学習指導要領,第1章総則,第1 教育課程一般9(5)は,視聴覚教材の利用について次のように述べている。「教科書その他の教材,教具を活用し,学校図書館を計画的に利用すること。なお学校の実態に即して視聴覚教材を適切に選択し,活用して指導の効果を高めること。」

また高等学校学習指導要領第1章,第2節,第2款指導計画の作成にあたって配慮すべき事項6(3)にも示されていることから,視聴覚教材や教育機器などを有効に活用して,言語活動を豊かにしたり,言語材料に慣れさせたりして,指導の効果を高めるように努力することが私たち英語教師の責務であると理解できる。

視聴覚教材の利用は,学校に導入される教育機器の種類や特性によって,プログラム学習に代表される個別的な学習と一せい指導の中での生徒の能カや適性に応じて学習を促進させようとするものとニつの方向ですすめられている。県内のL.L.設置校は,高等学校13校(フルラボ),中学校38校(簡易ラポを含む)と少ないが,高等学校では毎年1〜2校ずつ設置されている。VTR,OHP,アナライザー,などの導入も多く,また,ほとんどすべての英語の授業では,テープ・レコーダーによって録音教材が利用されているのが現状である。そこで英語科における視聴覚教材の活用,特に録音教材の利用について考えてみたい。

1.英語科における視聴覚教材の活用

現在おもに利用されている録音教材は,伝統的な視聴覚教材の特色を示すものというより,むしろ聴覚言語教材(audio-lingual materials)といわれるものである。たとえば,LLによる学習指導(テープ・レコーダーによる学習指導もふくむ)は,これまでの視聴覚教育(audiovisual education)の伝統的な考え方であった具体的,感覚的な教材による学習指導法としての枠組(frame)の中では関係のうすいものである。LLで使われる録音教材が,必ずしも具体的教材でもなければ,多感覚的教材(multi-sensory materials)でもなく,音声教材(audio-lingual materials)である。このことは,たとえば,英語という言葉とその意味しているもの(meaning)を正確に教えていくための教材というよりは,英語自体の構造が生徒にとって新しい言語習慣となるように反復練習(repetition)をさせることに意義がみとめられるわけである。反復練習を能率よくするための装置としてのLLであり,テープ・レコーダーであり,録音教材である。

これに対して伝統的な視聴覚教材の概念は,英語劇の録音や外国の街頭での会話録音を教室にもち込むことによって英語学習の興味を高め,その録音の現実感,臨場感にひたらせることによって学習の永続化を強化することであるというような教材観の相違がみられる。英語科における視聴覚教材の活用は,社会科や理科などの教科と異なり,英語と英語文化に関する概念を伝えることよりはむしろ英語の構造を新しい言語習慣(language habits)とするためのドリルとしての性格が強いということを考えなければならないわけである。

2.コミュニケーション(Communication)

「ことぱ」をコミュニケーションとして教えることが英語教師の目標として広く認められ,生徒がある程度すらすらと本物の慣用語法(authentic idiom)を使って話せるように教えなけれぱならないということは,種々の研修をとおして多くの先生方に理解されるようになってきたと思う。

しかし話されたことが他の人に理解されないかぎり,話す行為だけではコミュニケーションは成立しない。外国旅行をした人々の中で,自分の言いたいことは,かなりわかってもらえたという経験をした人は多いようである。というのは,自分の言いたいことは身振りや紙に書いたりすることによって十分意志を伝えることができるからである。一番困ることは,自分に言われていること,自分のまわりで言われていることが理解できないということである。外国人がゆっくりと,はっきりと発音してくれても,強勢(stress),イントネーション,語群(word grouping)といった要素が作用して理解をはばんでしまうのである。その結果としてコミュニケーションは全然生れないし,旅行者の話す能力も十分に発揮されない。コミュニケーションの目的を達成するためには,話されることば(spoken language)を理解するよ


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