福島県教育センター所報ふくしま No.22(S50/1975.8) -015/026page
うに教える−聞いて理解するという面の指導−が一番大切な問題となってくる。そこで音声教材の利用価値を再認識しなければならないと思うわけである。
3. 音声教材(audio-lingua1 materials)言語教育理論は一般に次のように大きく二つに分けられているのはご承知のとおりである。即ち,オーラル・アプローチの学習理論(Audio-Lingual Habit Theory)に関係する構造言語学(Structural Linguistics)と,行動主義心理学(Behavioral Psychology),もう一方は認知主義心理学の学習理論(Cognitive Code-Learning Theory)に関係する変形文法(TransformationalGrammar)と,ゲシュタルト心理学(Gestalt Psychology)の二つの流れがある。
このような新しい言語学習観にたつ外国語指導法は,聞き話す能力の養成に非常に重点をおいている。このような方法によって指導計画をたてるとき,録音教材(音声教材)の利用は不可欠のものとなる。
「なんらかの音声再生機器の利用を前提として,言語学習を従来の授業以上に効果的にすすめるための教材」と定義されている音声教材は,言語そのものの学習を促進し強化させる補助的手段としてとらえることがー般的である。しかし最終目的である言語学習に効果的な手法・方法をすべて言語習得に直接関係あるものと考えれば,音声教材である録音テープを単に補助的とは考えないで不可欠のものととらえることができるわけである。
音声教材の授業で期待される効果は次のようにいわれている。ア.英・米人の発音で学習できる。イ.学習の単調さをふせぐことができる。ウ.学習意欲を高めることができる。エ.記憶の定着を強化するのに役立つ。オ.何回もくりかえし練習ができる。カ.LLでは,ある程度個別学習ができる。
4. 聞きとり理解(lietening comprehension)の指導リバース(Wilga M. Riyers)は,教師が生徒に聞きとりの力をつけるには,識別段階(recognition level)と選択段階(selection leve1)のニつの活動段階があることを考えなければならないと述べているが,次に引用した部分は興味ある考え方である。
The first level, the recognition level, involves the identification of Words and phrases in their structural interrelationships, of time sequences, logical and modifying terms, andof phrases which are redundant interpo1ations adding nothing to the development of the line of thought. For the student unaccustomed tolistening to the foreign language this process of identification completely occupies his perceptual processes so that no retentionmaterial can recirculate. It is only after the recognition of these general features has become automatic that the student can be expected to reproduce or respond to what he has heard in a long sequence.
At the second level, the level of selection, the listener is drawing out from the communication those elements which seem to expressthe purposes of the speaker or those which suit his own purposes. This he can do at first only with short utterances.
(Teaching Foreign-Language skills,The University of Chicago press p.142)
第1の段階では,特に修飾上の用語や思考の流れに関係ない余剰の挿入句(redundant interpolations)などの識別の訓練が必要であり,第2段階では,コミュニケーションから相手の意図や聞いている人の目的にあったものを引き出す技術を身につけなけれぱならないということである。
長い文を続けて聞いているときに,聞いたことの要点をつかむことができなくなったり,最初に相手の意図をまちがって受けとると本当に重要なことを聞きすててしまうようなこともよく経験することである。教室での限られた時間内で生徒に身につけさせるためには,話の要素をいちいち母国語と比較し分析するような習慣が身につかないように配慮しなければならないわけである。
聞きとり理解 (listening comprehension) の練習問題の形式を考えてみると,次にあげる(1)〜(5)が一般的ではないかと思う。また既習教科書付属テープを活用することによって教師の負担も少なく教室に導入しやすいと考えられる。
(1) 適当なポーズ (pause) をおいて反復練習
(2) section のある部分だけを聞かせて英文で書かせるデイクテーション(dictation)
(3) section や lesson全部を聞かせて,プリントしたいくつかの日本文と意味内容が正しいかどうかを問う true-false 形式
(4) section や lesson 全部を何回か聞かせて教師の話す英語の質間に答えを英語で書かせる形式
(5) (4) の場合で,答を日本語で書かせる形式
この程度のことを目標にして,テープレコーダーを用いて,いわゆるヒアリング練習が容易にできるのではなかろうか。更に,今年は教科書の採択がかわった年であるので,2・3年生に対して,1・2年の教科書付属のテープを聞かせることによって,生徒にとってはじめてであるが内容的に理解しやすい教材,あるいは,現在は