福島県教育センター所報ふくしま No.22(S50/1975.8) -019/026page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

ここで問題になるのは,所報19号において述べられているように,女子教師の教育は男女両性の児童・生徒の性格の発達にのぞましく作用しているという結論と,上記表IIIの2の中の68.2% (全男子教師では40.8%) の数値の“ずれ”の解釈である。

この点に関してはいろいろな憶測がたてられると思うが,本研究では,今回実施したアンケートに記述されている先生方の意見の集約と分析からのみそれにアプローチを図った。

A 学校運営上男女教師の性別の違いがいろいろと問題を生んでいるようですが,それはどんなことか
男子教員の意見 女子教員の意見
1 校務分掌,分掌事務の不均衡 1 校務分掌で女性が差別されることが多い
2 女子教員には研修意欲がないものが多い 2 指導的ポストがあたえられにくい
3 感情的になり易く理論的に話しあえない 3 雑用を多くいいつけられ意欲が喪失する
4 積極的に仕事にとりむ気構えが無いものが多い 4 女子のクラス担任が制限されることがある
5 責任感がうすい 5 時間外の部活動に参加できにくい
6 依頼心が強い 6 家事におわれて学校の仕事が酷になることがある
7 会議で発言せずあとでとやかくいう 7 女性軽視がみられる
8 企画性に乏しい 8 5教科以外の軽視が女教師を圧迫している(中学校教師のみ)
9 指導的ポストにつきたがらない
10 マイ・ホーム型になりすぎる
11 協調性がない
12 思考に幅がない
13 学級王国を作り易い
14 部活動・クラプ活動に積極的でない
15 退勤時間がルーズ
16 学校行事に非協力的
17 連帯感に乏しい
18 産休・休みが多く担任を持たせられない

上記の回答は,大多数のかたがたの意見を集約して掲げたものである。なお,男子教員の回答に比して,女子教員の回答は数量的に極めて少なかった (無回答が約1/3) のは非常に残念であったことを付言しておく。

B 上記Aで述べられた問題の解決法としては,どんなことが考えられますか。
男子教員の意見 女子教員の意見
1 給与の平等と同じように働きも平等に 1 校務分掌の均等化をはかる
2 女教師に自信をもたせる 2 女性自身の気持ちの問題である
3 積極的に仕事をさせる 3 適材適所の校務分担
4 アドバイスのみにとどめ仕事の手助をしないようにする 4 社会体育の充実をはかり,クラプ活動を教師の手からはずす
5 女性教師の研修の場を多くし再教育をする 5 雑務を教師の手からはずす
6 女性にもリーダーシップをとることができるように配慮する 6 産休・病休がらくにとれるようにし,精神的な負担を軽くする
7 組織上の問題の再考 7 育児施設の充実をはかり,女子教員が安心して働けるようにする
8 管理職の人間性が最も大切である
9 学級担任の男子優先の排除が必要
10 共通理解と共同実践
11 本人の良識と意欲にまつよりしかたがない
12 男女の特性を生かした協カが必要
13 女性教師にもポストを多く与える考慮をする
14 学校運営面についての研修にも女性を参加させる
15 T.T方式の導入
16 育児休暇制度の導入

以上のほかにもニ,三の意見が提示されていたが,多数の者が提案しているものを上げてみた。この項目についても,女子教員の回答数が非常に少なく,内容的には,いますぐ学校現場で改善できる提案よりは,これからの教育行政に望む声が多くみられたことが男子教員の提案と異質であったことを付記しておく。

III 結論

本研究によって,女子教員に理数系科目を習うと学力が低下するという神話は,神話の座からまったくの俗説の座に移しかえられ,「 女教師 に教えられたからではなく, ある 女の先生に教えられたために…………… 」という囚果関係が明確になった。

ただ,いろいろなかたがたの意見を総合してみて,依然として学校現場には男女教師の性の違いが生みだす問題は山積されているようである。男子教員,女子教員も共にこれらの点に触れることをタプーとせず,………から自由を求めて逃げるのではなく,その中へ積極的に参加し再建をはかる,………への自由を目ざし,よりよい教育の場,住み良い教育の場を作ることに協力していかなければまならないことを,ここで再認識し実践に移していきたいものである。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育センターに帰属します。