福島県教育センター所報ふくしま No.23(S50/1975.10) -002/026page

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小 学 校 教 材

社会科において探究する力を育成するには


第 1 研 修 部 境 野 啓 ニ



はじめに
授業にたずさわる先生方から

・「探究学習は,低学年でもできますか。」
・「探究学習ですか,探求学習ですか。」
・「探究学習と発見学習とはどんな違いがありますか。」
・「探究学習をやらせているのですが,結局は今までの授業と同じになってしまいます。」

など,探究学習についての質問がよくだされる。

これは探究学習が杜会科に課せられた情報社会化における能力の育成に対処するものと意識された結果であると同時に,県小教研社会科研究部の今年度の研究主題「ひとりひとりの児童に探究する力を育てるには,授業をどのように改善したらよいか。」解明への過程から生まれたものであると考える。そこで,文献に私見を加え参考に供したい。

1.発見学習

発見学習(heuristics)は,1955年のスプートニックショック以来,アメリカで始まった教育改造運動(特にカリキュラム改造と学習内容の現代化)のなかで,主としてプルーナーによって提唱された学習指導の一方法である。

原理的には,児童・生徒の経験を重視しすぎる問題解決学習と科学の結果とその論理体系に従って教える系統学習とを批判する立場に立ち,学習者である児童・生徒が「新しく創造するかのごとくに」(発見したかのように)真理を獲得していく,再創造の過程,すなわち学問の基本的,体系的な知識を児童・生徒みずからが主体的に再発見していく過程を学習指導の本質とする考え方に基づいたものである。

なお,ブルーナーは,「発見」を「人類が未知の何物かを探す行為に限定しないで,自分自身の頭をつかって,自分で知職を獲得するすべての形態を含むものである」と定義している。

この学習は,教科における最も基礎的,基本的な概念を選定し,それによって,「教材の構造」の枠組みを明確にし,これを前提として学習が行なわれる。そこでは基本的概念と他の多くの事物との構造的関係をは握させるとともに,学習のための方法と態度,推理・予測の能力,自分自身で問題を解決する態度を育成することに努力がむけられる。ここに発見学習の本質がある。(「社会科基本用語辞典」より)

わが国においても発見学習の試みは,金沢大学付属小学校・水越敏行氏らによって推進されているがこれによると社会科における発見の対象は,法則性よりも社会的な事実と事実,現象と現象との間に存在する関係にあるとし,社会科学習において適切な学習方法であるとしている。

そして,発見学習の基本的・典型的な学習過程として次の5段階をあげている。

1. 課題をとらえる

自分(たち)の既有知識や能力と与えられた問題(できるならば,自分たちで見つけた問題)との効果的なずれを自覚する。

2. 予想をたてる

ひらめきにも似た着想である。ここでは特に直観思考と選択思考(alternative thinking)が主役を果たす。もちろん分析思考(論理思考)を裏付けにもってのことである。

3. 仮説にたかめる

予想を修正し,一つの筋道だった理由に基づいて,「きっと○○になるはずだ」というような形の仮説にまで高める。さらに「こうすれぱ高められるはずだ」というように,検証の条件や方法までも含んだ作業仮説に煮つめることを目指す。ここでは分析思考がゴミ役を果たす。もちろん直観思考などを裏付けにもってのことである。

4. たしかめる

仮説をいろいろな条件のもとで幾重にもたしかめ,それに耐えぬき生き残った場合にその範囲内で規則性,法則性として確認する。

5. 発展する

より高次な問題場面にあてはめて,その妥当性を確かめると同時に,次の学習課題は握へのルートをつける。

5段階中,特に「課題をとらえる段階」と「仮説に高める段階」が重要視されている。課題をとらえる段階での効果を上げるためには,児童・生徒自身の矛盾感を内包させるような質の高い課題をとらえさせることが大切であり,仮説に高める段階は,知識の生成過程をたどらせながら,思考力や学び方を育てるのに最もふさわしい


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