福島県教育センター所報ふくしま No.23(S50/1975.10) -004/026page
収集し,選択し,活用するいわゆる情報処理能カを育成する進取な態度を持続させるきっかけとして重要であるからである。
資料についても,発見学習では,『「典型資料」が必要であり,小学校の児童の選択能カからみて,教師から与えることが多くあってもよい。それは課題となる内容が全体的にリアリティに包みこまれたものであって,児童の直観的な判断と対比させ,児童の思考をコントロールさせるのに必要である。どのような典型資料をぶつけるかは,発見学習の過程を効率よくしていくキーポイントになる。』としているのに対し,探究学習方式では,『情報処理能カの育成を重視するので,できれば,教師の方でこうした教材を用意し,それを与えるという方法を避け,子ども自身に検証に必要な情報資料を集めさせる場をつくっておくことも必要であろう』としている。
また,社会認識の生成過程をたどらせるには,児童の認識(特に時間認織)の発達程度から考えて4年生ころから本格的な展開ができるとする発見学習に対して,学年にこだわらず,むしろ低学年から探究力を育成すべきだとする探究学習方式に研究の視点の違いを見ることができる。
4.探究するカを育成するには実験をふまえ研究が進展している水越氏の提唱する発見学習と大野氏の提唱する探究学習方式を中心に考察してきたが,ここで探究する力を育成する学習を展開するにあたっての愚見を述べてみたい。
発見する力と探究する力の概念のとらえ方によって,いずれの学習理論を採用するか決まるのであるが,小教研では,「探究する力とは,児童自らが,基礎的な能カを駆使して課題をとらえ解決に立ち向かって社会的な認識を深める。そうしたことのできるカである」としており両者を含むものと考えられるので,いずれの学習理論を採り入れるかは,教師にまかせられている。そこで大切なことは,どちらかの学習過程を採用すれば,事足れりとするのではなく,学習理論の本旨を生かし,児童の実態に応じた「探究的学習」方式をつくりだしていくことである。
発見・探究いずれの学習理論も教育内容の現代化にともたう教材の精選を基底とするものであって,対象とする教材の構造を切りはなして考えることはできない。したがって,まずなされなければならないことは教材構造の分析であり,右例のように中心概念(中心となることがら)とそれを支える基本となることがらを明確にすべきである。
探究学習方式の場合,探究間題の設定から始まって,最後の結論の吟味に至るひとまとまりの学習過程を通してやっと一つの中心概念が形成されるが,これを一時間の授業で展開しようとするならば,探究する力を育てることは難しいであろう。そのために1小単元1中心概念形成を図り,児童が主体的に探究する活動時間を確保すべきであると考える。下例は,教材構造分析に基づいて作成した指導計画の1例である。参考になれぱ幸せである。