福島県教育センター所報ふくしま No.23(S50/1975.10) -005/026page

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小 学 校 教 材

流水のはたらきの指導について


第 2 研 修 部 小 野 寺 寿 雄



小学校理科の中でも,C領城(地球と宇宙)の教材はありのままの自然界の事物・現象を直接学習の対象としそこにひそむ事実,原理や法則などを探究させるところにひとつの特色があるといえよう。しかし,自然界の事象そのものは,いろいろな要因が複雑にからみ合ってはたらいた結果生じたものであり,簡単に実態をさぐったり,因果関係を明らかにしたりすることは困難なことが多い。

ここに取り上げた,4年の教材「流水のはたらき」においても,自然に見られる川の流れは,川のまわりの地質構造,川底の岩質,傾斜,水量,水系の発達の具合など,教多くの要因が複雑にはたらき合ってできたものである。そして,流水のはたらきによって超こる地形の変化は絶え間なく,しかも広い地城で行なわれており,長い年月の間には,大きな変化をもたらしているわけである。このような現象を,時間的な長さや,空間的な広がりと結ぴつけて考察し,その因果関係を明らかにさせることは容易ではない。

学習指導要領によれぱ,ここでは,川の水が土地の様子を変えたり,土や砂を運んだり,積もらせたりすることを,流水の速さや水量と関係づけて理解させることなどをねらいとしており,その取り扱いについては,「自然に親しみ,自然の事物・現象から問題を見出し,これを分析的に比較し,現象と具体的な物を互いに関係づけようとするように留意することが必要である。」としている。

一方,学習者に目を向けれぱ,いわゆる具体的操作の段階といわれる時期に相当する小学4年生には,時間的にも,空間的にも広大な広がりをもった流水のはたらきについて,関係的な見方をすることは困難で,たとえば,川の地形はもともと固定しているものであり,その地形に従って水が流れていくものであるというような見方はしても,川の水の流れがその地形を変えるというような考え方はしない。ここにも,この教材をとり扱う上で特別の手だてや,こまかい配慮を必要とする理由が存在するのである。

以上のような観点から,流水のはたらきについて,情報収集と検証の指導を中心に述べてみることにする。

I 野外観察(自然からの情報収集)について

この教材の学習は,自然の川の流れや川原の様子などをありのままに観察することから始まる。問題をつかませ,それについて推論するのに必要な情報を集めるのがねらいである。野外観察は,学校によっては時間的,場所的に制約をうけることが多いと思われるが,自然に親しませ,学習に興味をもたせることができる点で,その効果ははかり知れないものがあるので,ぜひ実施したいものである。

野外観察を実施する場合の留意事項はいろいろあるが,ここでは,児童にねらいをはっきりつかませておくこと,しかもそのねらいは,ごく少数におさえることの2つだけをあげておく。また,いつも見なれ,見すごしている川の流れや川原の様子から何かをつかませるためには,「流れの速さ」「川原の小石の大きさや形」など,具体的な視点を明示してやることが必要である。野外観察が実施できない場合は,スライド,8ミリ映画,VTR等,視聴覚的な方法を利用する。視点を明示して,危険防止の注意を与えて家庭学習にしてもよい。

ともかく,直接的にせよ,間接的にせよ,川の流れや川原の様子を観察させることによって,「川原はなぜできるのだろう」とか,「川原の小石はどうして丸いのだろう」たどの疑問をもたせる。しかし,児童の中には川には川原が存在し,川原には小石があるのは当然と受け止め,疑問がわかないことがあるかも知れない。その場合は,上硫の地形と比較させることによって,その違いに気づかせ,疑問をもたせることができるが,実際に上流と下流の2地点を観察させることは困難なことが多いので,視聴覚的な方法によって上流から下流まで観楽させれば,これをおぎなうことができる。

このようにして問題をつかませ,さらにこまかな観察の結果から原因を考え,推論させるわけであるが,それを確かめることは野外観察では無理である。限られた時間内での野外観察では,川の水が実際に地形を変化させていく過程を見ることは不可能だからである。そこで次にこれを確かめる手段としてのモデル実験について考えてみたい。

II モデル実験(検証)について

流水のはたらきの学習において,観察した事実から推論されたことがらを確かめる(検証)段階で,教師の説明を聞くだけに終わってしまうとしたら,学習のねらい


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