福島県教育センター所報ふくしま No.23(S50/1975.10) -006/026page
の達成は半減される。そこで,自然の川を実験室内に持ち込み,条件を規制して実験すれば,推論したことをある程度確かめることができるはずである。このように,自然現象そのものについて実験が困難な場合に,モデルを作って検証したり,さらにそのモデルによって推論したりすることがよく行なわれるが,このモデルを児童自身が,いろいろくふうしながら作り上げること(モデル形成)は,理科学習指導上,科学の方法の一つとして重要視されている。しかしここでは,児童の発達段階を考慮して,モデルを考えて作ることよりも,モデルによる検証,推論など,活用の面に重点をおいて述べる。
実験1 水の流れる速さと運搬力についての実験ねらい 1. 流速の逮いは川底の傾斜に関係する 2. 流速は水量にも関係する 3. 流水がれき(小石)などを動かす(運搬)力は流速に関係する 4. れきの大小によって動かされ方が違う等の推論を確かめる。
準 備 流水台,(自作,雨どいでもよい)分度器
発砲スチロール片,ポリエチレン製下ロびん
れき,砂,ねん土の混合したもの方 法 1. 流水台とポリエチレンびんを図−1のようにセットする。
びんには,図のような装置をつけて,中の水面がガラス管の下端にくるまで,ほぼ一定の水量を流すことができるようにする。この程度の実験では,水道の蛇口から直接ゴム管で導いてもよいが,水道のない場所でも使用できるので,この方が便利である。
2. 一定量の水を流しながら発泡スチロール片などを流して流水台の傾斜を変えて流速を比べる。
3. 流水台の傾斜を一定にして水量を変えて(下口ぴんのコックで調節)流速を比べる。
4. 流水台の途中にれきや砂,ねん土の混合物をおきしだいに水量を増したり減らしたりして動かされ方を観察する。(写真−1)
考 察 流速は流水台の傾斜が大きいほど,また,水量が多いほど大きいこと,また,流速が大きいほど大きいれきも動かすこと,流速が小さくなると動いていたれきも止まることなどが確かめられれぱよい。
留意点 ここで確かめられたことは,これから流水のはたらきを考えていく基礎になるので,はっきりとおさえておかなければならない。
また,傾斜を変えて流速を比べるとき,水量を一定にするなどの条件の統一の必要性について,児童自身ではなかなか気づかないのでよく説明して理解させておく。
実験2 流水と地形の変化についての実験ねらい 1. 流水が岸にあたってそれをくずす
2. 下流のれきは上流から運ばれてくる 3. 流れの曲がった所では外側にがけが,内側に川原ができる 4. 流速の小さい所では堆積が起こる 5. 普通の流れでは動かされたいれきも,流速が増すと動かされることなどを確かめる。準 備 流水の働き実験器 実験用試料(れき,砂,ねん土の混合したもの,山砂などがよい)
方 法 1. 実験器の上流部に試料を平らにしき,幅5cmぐらいの直線のくぼみをつけ水路とする。上流部を高くして10度ぐらい傾け,水道の水を流しながら次の点を観察する。(図−2)
ア 岸がくずされるしくみとくずされる場所 イ 動かされる粒の大きさと運動の様子 ウ 堆積の場所とその様子 エ 流路の形の変化 2. 水量を増減させて流速を変え,1. と同様の観察をする
3. 曲がった流路をつくって水を流し,その内側と外側の変化の様子を観察する
考 察 流水や流水によって運ぱれるれきや砂が岸に衝突して岸をくずすこと(浸食)や小さなれきが流路の底を転がったり,互いに衡突しながら運ばれていくこと,まわりに比べて流速の小さい所や流れの止んだ所では,急速に堆積が起こること,水量を増すと岸が大きくくずれ,運搬されるれきや砂の量も増えること,水量が少ないときはほとんど何も運搬されないこと,曲がった水路