福島県教育センター所報ふくしま No.23(S50/1975.10) -007/026page

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では,外側では岸がどんどんけずられ,内側にはれきや砂が堆積し(写真‐2),水路の曲がりがしだいに激しくなることなどが確かめられればよい。

留意点 水を流す時間が長いほど,自然の川に近い形になるので,ある程度時間をかけて観察させるとよい。

流速を変えるため傾斜を変えてもよいが,水量の変化だけでも十分である。

写真−2
写真−2

実験3 れきの形の変化についての実験

ねらい れきは流される間に川底や他のれきと衡突し合って丸みを帯び小さくなることを確かめる。

準 備 広口ポリエチレンびん( 500m ,薬品のあきぴんでよい) せつ こう片(1辺1cm ぐらいに切断しておく)

方 法 1. びんの中に10〜20個の石こう片を入れ,その石こう片が浸るくらいの水をか加える。

2. びんにふたをして,回数を数えながら激しく振り一定回数ごとに中の石こう片をとり出し形の変化を調べる。また,びんの中の水がにごるのを観察する。

考 察 振る回数が多くなるに従って石こう片の角がとれて丸みを帯び,しだいに小さくなると同時に,水がにごってくること(写真−3)が,れきが流水のはたらきですり減っていく現象と結びつけて考えられれぱよい。

写真−3
写真−3

留意点 実験前に,この実験が自然の川のどこに対応させて計画したものかを明らかにしておくことが必要である。最初の石こう片は上流のれきであり,水を加えて振ることは流水のはたらきに相当し,振る強さは流速ということになろう。したがって,振る強さを変えて石こうの減り方を調べさせるのもおもしろい。自然のれきを使うと形の変化がはっきりしないのが欠点である。

III モデル実験に対する考え方

実験1はモデルとしては単純であり,実験3は特殊な点だけが自然現象と対応するので,そこに着目させることはそれほど困難ではない。しかし実験2は,いわば人工の川を実験室内に作り,自然の川に見られる現象を再現しようとするもので,自然の川によく似ているだけに誤解を生む面も多い。実験器の中のれきや砂が流水によってつぎつぎと運ばれ,流路の移り変わっていく様子を観察することにより,大自然の川の水のはたらきで地形が変化していく過程を想像することができ,しかも,それがわずか数分の間に,数百年,数千年の間,地表で行なわれる変化の過程を観察できるわけであるが,これがそのまま,すべて自然の川でも起こっているかのような印象を与えないようにしなければならない。この教材を扱う根底には,広大な時間,空間の広がりと,そこにはたらく巨大なエネルギーに気づかせるというねらいがあるのだが,このモデル実験からは直接感じとることはできない。したがって,流水のはたらきのすべてをこのモデル実験によって学習させるのではなく,よくその限界をわきまえて指導に当たらなければならない。また,実験2では,時・空間の広がりの外に,水路の傾斜が一様で地形に上流,下流の別がないこと,川岸が軟弱なために浸食地形はU字形に近いこと,支流がなく水量も上流下流の別がないこと,その他,水深や川に比べたれきの大きさなども自然の川との対比は無理である。

次に,このモデル実険は児童にとっては喜ばれるが,そのねらいと観察の観点を明らかにしなければ,水遊ぴに終わってしまうことになる。また,ある現象を見ても,観点がわからないために見逃すことはよくあることである。たとえば,流水によってれきや砂が流されることは観察できても,流されながら他のれきや砂とからまり合い衝突し合うことに気づく児童ほ少ない。なお,各実験の考察にあげた事項は,そのまま観察の観点であり,モデルとしての対応点でもある。

流永のはたらきの指導について,野外観察とモデル実験を中心に述べてきたが,実際にはなかなか実施されないことが多いようである。地域性や施設設備の問題もあろうが,いろいろ工夫して,ぜひ実施したいものである。このようにして学習を進めることは,黒板と教科書の写真の説明だけの学習よりも,少なくとも楽しく学習させることができる。この,学習を楽しくということが,理科を探究的に学習させる上で欠くことのできない要素なのである。そして,川の流れのように児童にとって身近な自然でありながら,つい見過ごしている自然現象を,科学的な視点にたって見ることのできる目を養うことこそ,小学校理科の最終的なねらいに通じるものであろう。


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