福島県教育センター所報ふくしま No.23(S50/1975.10) -008/026page

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体育の学習意欲を高めさせる児童の自己評価

−腕立て閉脚とびを中心にして−


第 1 研 修 部 氏 家 仁



はじめに

子ども自身に自己秤価をさせるということが,学習意欲をよぴおこすことと深く関連するという指摘がしばしぱなされてきた。体育の授業でも,子ども自身に技能などの程度を自己評価させ,それにもとづいて,目標をきめ,互いに協カし合って,根気強く運動の学習をさせるといった姿勢がもとめられてきた。しかし,子ども自身に自分のやったことについて評価的判断をさせたとしても,そのことによって,かならずその子どもが意欲的になるというものではないだろう。

梶田叡一氏が指摘しているように,子どもによっては,非常に消極的な評価をくだし,すっかり自信を失って意欲などどこかに消えてしまうこともあるだろうし,また,これとは逆に,非常に積極的な評価をくだし,その満足感の中に浸り込むことによって,かえって新たな意欲の出現を妨げることもあるであろう。

このように,自己評価をするということ,あるいは自己評価の習慣をもつということだけで,体育の学習意欲がよぴおこされたり,意欲的な状態が継統されたりするわけではないのである。それらが,ある適当な手順や妥当なやり方でなされてはじめて,子どもに新たな学習の意欲をよびおこすものとなるであろう。

1.はっきりとした学習の見通しを背景にした自己評価

子どもが,腕立て閉脚とぴの授業においておこなう自己評価が,意欲の喚起へとつながるための必要条件として,まず第一に,この学習単元の導入にあたって,ここで学習すべき目標群の達成系路を子どもに提示することによって,はっきりとした学習の見通しをもたせ,それを背景にした自己評価であるという条件を挙げることができるであろう。

子どもたちが,現在やっていること(資料1),それぞれの子どもの能カに応じて(資料2)これからやろうとしていること(資料3・4・5),について,はっきりとまとまった認識をもち,子ども自身がやったことや達成したことをそれとの関連において位置づけるという形の自己評価になっているならば,子どもにあらたな意欲をよぴおこさせるものとなるであろう。

資料1

(資料2)子どもの現状 目 標 水 準 運動の練習方法
・腕立て閉脚とびができない ・腕立て閉脚とびができるようになる ・資料3参照
・あまりじょうずではないが,腕立て閉脚とぶができる ・ひざを深くまげて安定したフォームで着地ができる ・資料4参照
・調子よく腕立て閉脚とびができる ・スピード感があり安定したフォームでできるだけ遠くへとびこすことができる ・資料5参照

2.だれにでもみとめられるような実態は握に基づく自己評価

体育の授業において,子どもの自己評価が意欲の喚起へとつながるための必要条件として,第二に,子どもの自己評価が他の子どもや教師からみとめられるような実態は握にもとづくものである,という条件を挙げることができるであろう。自己評価だけにかぎらず,子どもが自分自身に対してもつイメージや判断は,総じて,自分で自分の心をあざむくようなことを,多かれ少なかれ常にふくんでいるようにおもわれる。


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