福島県教育センター所報ふくしま No.23(S50/1975.10) -010/026page
3.努力するならば達成しうる目標水準と関連づけられた自己評価体育の授業において,子どもの自己評価が意欲の喚起へとつながるための必要条件として,第三に,そのままではその水準を達成することは困難ではあるが,努力するならば手がとどかないわけではないというあたりの目標水準との関係でなされたものであるという条件を挙げることができるであろう。たとえば,10段階の技能テストで同じ6段階の評点をとったとしても,そのテストで4段階の評点をとれば,上出来と考えていた子どもにとっては成功であり,みずからの成果を満足すべきものと自己評価をするであろうし,9段階をとることを目指していた子どもにとっては失敗であり,みずからの成果に対して大きな不満と落胆をいだくといったかたちの自己評価をするであろう。
したがって,みずからの実態にくらべて高すぎる目標水準をもちがちな子どもは,みずからの現実の成果について低い自己評価をし,落胆や挫折感に悩まされるようになるだろうし,逆に,みずからの実態にくらべて低すぎる目標水準をもちがちな子どもは,みずからの結果について常に安易な満足感をもつということになるであろう。
このように考えてくるならば,自己評価をさせる前提として,子どもにそれぞれの能力の実態をは握させるとともに努カするならば達成しうる目標水準(資料2)をもたせるよう指導することの重要性がうかぴあがってくるであろう。
4.自己の努力によって自己を高めていくしくみの一還としての自己評価体育の授業において,子どもの自己評価が意欲の喚起へとつながるための必要条件として,最後に,子どもが他の者の指導にまたず,自分の努力によってみずからを高めていくというしくみの一還として,その子どもの中に位置づいたものであるという,条件をあげることができよう。
梶田叡一氏が指摘しているように,子どもがみずから目標をは握し,あるいは設定し,それの達成に向ってみずから努力し,その成果について自己評価しながら目標のたてかたをかえたり,努力の仕方を軌道修正したりすることがある程度できあがっているならば,子どもの自己評価が持続的な効果をもった意欲を喚起することになるであろう。
たとえば,碗立て閉脚とぴの指導をながめた場合,子どもに閉脚でとびこすための,踏み切り,手のつき,膝のひきつけ,手のつきはなし,着地などのやり方・タイミングや身のこなしを指導し,体得させることにとどまらず,それらの指導を通して,子どもがみずから,規制された(とぴ箱のもつ高さ,長さ,幅,そして,体型=閉脚でとぶ)条件を克服し,題材そのものの動きを自分のものとし,自分の努力によってさらにみずからを高めていくことを子どもに援助していくことが量要な課題となるであろう。
おわりに以上,体育の授業において,子どもに学習意欲を喚起させるための自己評価の条件について検討してきた。
今後,体育の授業のなかに,子どもによる自己評価をどのようにとり入れていくべきか,という問題について検討をかさね授業の中で実践していく場合の参考になれば幸である。
なお,子どもによる自己評価が,学習意欲を喚起させるための条件の内容構成にあたっては,国立教育研究所研究員梶田叡一氏の論説「児童の自己評価と学習意欲」を,体育の授業において,この理論を実践する力法を検討するにあたっては,東京都文京区青柳小学校教諭大野幸男氏の「体育における評価と指導の改善」を資料として活用させていただいた次第である。
参考文献
梶田叡一 「児童の自己評価と学習意欲」 初等教育資料 No.305 1974 大野幸男 「体育における評価と指導の改善」 初等教育資料 No. 305 1974 坂元 昂 「授業実践と教育機器」 小林一也 明治図書 1973
− 県 教 育 史 余 録−県甲第35号(明治19年10月12日)町村立私立学校建築規則に下記のように示されています。
第五条 学校建築ノ概略ヲ示ス左ノ如シ 第一項 小学校ノ場所ハ(略)……空気ノ流通ニ宜ク十分ニ太陽ノ光線ヲ受クルノ地ヲ擇ムへシ必ス喧囂不潔危険ノ場所及卑湿ノ土地ヲ避クへシ 第ニ項 敷地……(略),其地形ハ長方形ニシテ児童一人ニ付ニ坪半ヲ下ラサルヲ可トス(略) 第七項 階梯ハ多数ノ児童ヲ容ルル学校ニ於テハ… (略)……故ニ直行或ハ彎回ナラス半折シテ喰違状ニ為シ又欄干ヲ設クルヲ可トス 第十項 教室ハ…(略)……大ナルモノハ長サ五間巾四間以上ニ至リ小ナルモノハ長サ三間巾ニ間半ニ至ル……(略) 第十一項 児童ノ出入ロハ男女ヲ別ニシ其位置ハ恒風ノ向ヲ避クへシ又入口ノ両側等適宜ノ所ニ児童ノ履物傘置台ヲ設クルヲ要ス 第十九項 学校用卓子椅子ノ高低ハ児童身体ノ長短ニ準ズべキモノトス,而シテ椅板ノ高サハ児童ノ脛ノ長サトー様ニシ後方ニ傾キタル椅背アルモノヲ用ユへク又卓子高サハ椅板ノ上ヨリ児童全身六分ノーノ距離アルモノヲ用フへシ