福島県教育センター所報ふくしま No.23(S50/1975.10) -011/026page
中学校教材
食 品 の 調 理 性 に 関 す る 実 験
−いかの加熱による変性−
第 2 研 修 部 佐 藤 清 子
1.はじめに第2学年の調理指導は,成人の栄養およぴ成人向きの献立作成と開連させ,調理計画の立て方,食品の調理上の性質,食品と調理用具の選び方およぴ取り扱いについて指導するようになっている。
指導内容の「野菜と魚または野菜と肉を用いたいため煮をつくることができること」では調理材料として,「乾物と冷凍食品の性質を知ること」との関連を考慮してほししいだけ,いかなどをとりあげ「いかと野菜のいため煮,中国風酢の物」の献立で実習しているところが多いようである。
今回はいかの組織観察をはじめ,いかの加熱によって起る収縮や重量の変化について実験を試みたので「いかの調理上の性質」を指導する際の資料として活用していただきたい。
2.いかのプレパラード作成いか肉はきれいなち密な組織であり,肉眼ではその構造が明らかでない。パラフィン包埋法でプレパラードをつくり顕微鏡観察をしてみた。
(1) 試料の作成
生の場合は図1のように資料を調整するが,調理をする場合は常法で調理し,3×5×5mmに切って試料とする。
今回は皮のついたもの,皮をむいたものの体軸に対して縦と横の繊維について,次の5種の試料を調整した。
1) 生 2)80℃で20秒ゆでる。3)100℃で20秒ゆでる。 4)100℃で40秒ゆでる。5)フライパンに油をひき,強火で表1分,裏30秒焼く。
(2) 固定・水洗・脱水
試料を10%ホルマソン緩衡液で1日固定し,1日水洗いする。後材料の水分をアルコールで迫い出す。
(3) 透徹
キシロールで組織を透化させる。
(4) パラフィン浸透・包埋
キシロールバラフィン,軟バラフィンの順に浸透させ,シャーレを用いて包埋する。包埋した組織の形をととのえ,台木に張りつける。
(5) 切片
製作ミクロトームにより10ミクロンの切片を作る。スライドグラスに簿く卵白グリセリンをぬり,蒸留水を1滴おとし,その上に切片をのせる。それを伸展器の上で伸展し,乾燥する。
(6) 染色(アザン染色)
1)キシロールおよぴアルコールを用いて脱パラフインし,後流水で洗う。
2)アゾカーミン液を60℃にし,30分染色する。
3)そのまま室温で放置し,水で過剰の色素をかるく洗う。
4)5%燐酸タングステン酸水溶液に30分以上つけ蒸留水でかるく洗う。
5)アニリン青,オレンジG混合液で10〜30分染色し,蒸留水で手早く洗う。
6)95%アルコールで分別・脱水・透徹・封入する。