福島県教育センター所報ふくしま No.23(S50/1975.10) -012/026page

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3.いか肉の組織

写真2はいか肉の組織を体軸に平行に切ったものである。筋繊維が体軸に直角に走り,それが一定の間かくで仕切り様の組織におさめられている。この仕切りの膜の間かくは200〜500ミクロンといわれているが,加熱時間が長くなるほどせまくなる。加熱により筋繊維が収縮する状態が観察できる。

写真3  いか肉の組織(体軸に直角)  焼いたもの  × 100
写真3 いか肉の組織(体軸に直角) 焼いたもの × 100

写真3はいか肉の組織を体軸に直角に切ったもので,細い筋繊維が体軸に対して直角に走っている。

写真4  いか胴側の皮と筋繊維の一部  生 × 100
写真4 いか胴側の皮と筋繊維の一部 生 × 100

1層 表皮 2層 色素層 3層 多核層 4層 真 皮

写真4は,いかの胴側の皮が4層からなっているところをとらえたものである。普通皮をむく場合は,2層と3層から分離する。したがって色素層が除かれるため加熱した場合にも肉は白くできる。3層と4層は肉と密着しているから除きにくい。写真4の右側の筋繊維(横に走っている繊維)と直角に交わって縦に走っているのが4層のコラーゲン繊維であり,この繊維は強じんで筋繊維を固定している。いか肉が加熱により収縮したり,丸まったりするのは筋繊維と4層のコラーゲン繊維の性質によるものである。

4.いか肉の加熱実験

(1) 実験方法

1)材料 するめいか(300gぐらいのもの)1ぱい

2)用具 一般調理器具,温度計,ストップウオッチ, ノギスまたはものさし,上ざらさおばかり

3)方法

1. いかの胴部と脚部を離し,ひれを取って内臓,軟骨をとる。
2. 胴部の軟骨のあった方を縦に切り開き,外側の1,2層の皮をむく。
3. 胴部を図2のように縦4cm,横2cm4枚(a 1 ,a 2 ,a 3 ,a 4 )縦2cm,横4cm4枚(b 1 ,b 2 ,b 3 ,b 4 )を取り,a 5 とb 5 はそのまま熱湯に2秒つけて,直ちに冷水にとり3,4層の皮と内側の皮をむく。これをa 1 1 と同じ大きさに切る。それぞれの重量を測る。

図2  いか肉試料
図2 いか肉試料

4. なべに水500ccを入れて火にかけ,50℃になったらa 1 ,b 1 を同時に入れ20秒たったら取り出す。
5. 湯の温度が70℃になったらa 2 ,b 2 を入れ20秒後に取り出す。
6. 湯の温度が90℃にになったらa 3 ,b 3 を入れ20秒後に取り出す。
7. 湯の温度を90℃に保ちa 4 ,b 4 を入れ60秒後に取り出す。
8. 湯の温度を90℃に保ちa 5 ,b 5 を入れ20秒後に取り出す。
9. 加熱した肉の重量と縦,横の長さを測り減少率縮小率を計算する。加熱後の形の変化も記録する。

(2) 実験結果と考察

加熱後の形の変化は写真5でみられるようにa 3 ,a 4 は皮の収縮が大きく縦に曲っている。加熱するとコラーゲンは加熱短時間において肉繊維より収縮率が大であるため,いか肉は表のほうに体軸カ向に対して平行に巻き上がる。調理目的によって巻き上がらせたい場合は,体軸方向に対して平行に切り込みを入れ,平らにしておきたい場合は直角に切り込みを入れるとよい。a 5 は,4層の皮と内側の皮をむいてa 3 と同様に加熱したもので

写真5  形の変化
写真5 形の変化


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