福島県教育センター所報ふくしま No.23(S50/1975.10) -015/026page
のようにすると,誤りがなく,また,能率的でもある。
4.S−P表による授業の診断(1) Sライン形状による診断
S−P表の1域と0域の境界に線を引いて,その曲線の形状から学習状況を診断する。S−P表に描かれる曲線にはSライン(S曲線ともいう)とPライン(P曲線ともいう)があり,S・P両ラインの形状と両ラインの間の面積(差異量という)とから総合的に診断する方法が研究されているが,Sライン形状の診断だけでも授業改善に相当役立てられる。
1. Sラインのかき方
S−Pは,表1でわかるように,1と0との分布が完全に分かれているわけではないから,このままでは境界線を引くことができない。そこで,各学習者について,1を上方に,0を下方に集めたと考えて1域と0域を区別する。このようにしてできた各学習者の境界を結ぶとSラインになる。このことは,問題を上から得点の位置まで数えて線を引いたと考えてもよい。(Pラインは,各問題について1と0を寄せ集めたと考えて引いた境界線である)
2. Sラインの形状と学習傾向
ア 0域が右下の部分にわずかにある場合
プログラム学習のようにステップの細かい指導をして,しかも,指導直後に反応させた場合にこのような形状になる。この場合の正答率は90〜95%で,1域の中に混入している0も少ない。
普通の授業でも,段階ごとの確認の反応では,このような形状にたることがのぞましい。
イ 曲線が下方で上位得点者の方にのぴている場合
練習問題のように,同じ種類の反応をくり返す場合にこのような形状になる。
学習者全員がかなり確実な反応をしているので,正答率も75%前後になる。このように曲線の傾斜角が小さい場合は,指導の個別化がよく行なわれて下位の学習者も学習事項をよく習得しているとみることもできる。
ウ 曲線が右側上方にもかなりのびている場合
総合された演習問題の反応に多くみられる。
学習者の能力差があらわれてくる。正答率は65%前後のことが多い。
曲線の傾斜角が大きくなってS−P表を左右にニ分するような場合は,教師の一方的な指導,学習者の実態無視,学習者の不確実な課題は握,学習者間の能カ差大,など,好ましくない授業であったと考えなければならない。
エ 曲線がS−P表を斜めにニ分している場合
テストなどで正答率が50%前後の場合にはこのような形状が多い。能カ差がはっきりしていて測定しやすいが,授業中のステップごとの確認反応ではこのような形状になることは好ましくない。
(2) 授業前後の比較診断
最近,事前テストと事後テストから有効度指数を求めて授業を診断することが多いが,S−P表を用いるとさらに詳しく診断することができる。
(例)表5から,次のことがわかる。
・授業全体としては,上位学習者にはかなり効果があったが,下位学習者にはあまり効果がなかった。
・問題5は,上位・下位に関係なく効果がみられるのに,問題2は,上位得点者にだけしか効果がみられない。
・問題3は,指導の方法あるいは問題内容に学習