福島県教育センター所報ふくしま No.23(S50/1975.10) -016/026page

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者の思考を混乱させるようなことがあったと思われる。

・学習者10は,この学習について単に能力が低いというだけでなく,特別な問題をもっていたと考えられる。

表5  事前テストの結果を書き加えたS−P表
表5 事前テストの結果を書き加えたS−P表

この表を,有効度指数と併せて用いれば,さらに的確な診断ができるであろう。

(3) 注意係数による異質性の数量的は握

SラインやPラインで区分された1域や0域に,0や1の混入状況を調べることによって,異質な学習者や異質の問題を見い出すことができる。そのような学習者や問題を発見しやすいように,注意すべき程度を数量的に表現したのが注意係数である。

注意係数には,学習者についての注意係数と問題についての注意係数がある。

1. 学習者についての注意係数は,Sラインの上方に0のある学習者について,次の式で求める。

学習者についての注意係数 1.(Sライン上方の0の問題の正答者数の和)−2.(Sライン下方の1の問題の正答者数の和)/ ※3.(上からN番目までの正答者数の和)−4.(下からN番目までの正答者数の和)

※Sラインより上にある問題数と下にある問題数をかぞえて,少ない方をNとする

(例)表6の学習者8の注意係数の計算は,次のようになる。

表6  学習者についての注意係数
表6 学習者についての注意係数

学習者8の注意係数=5−3/15−5=2/10=0.20

注意係数は,0.3以上の場合は要注意とみる。表6の場合は,学習者1が要注意となる。

注意係数は,要注意者を発見してくれるが,その原因までは教えてくれないので,その先は,教師の洞察力が必要になる。なお,注意係数が大きくとも,その学習者の回答が不適当であるとは言い切れない。注意係数は,“他の学習者と反応の傾向が異なるから,原因をたしかめよ”という意味の係数である。

2. 問題についての注意係数

問題についての注意係数を求めるには,SラインにかえてPラインを用いる。また,問題別の正答数にかえて各学習者の得点(正答数)とし,NはPラインの右と左のうち,少ない方の人数とする。そのほかは,前述した学習者についての注意係数の求め力と同様の方法で行えばよい。

表7  問題についての注意係数
表7 問題についての注意係数

(例)表7の問題5の注意係数の計算

a Pライン左側の0の学習者の得点「4+3=7」
b Pライン右側の1の学習者の得点「1+1=2」
c Pライン左側のN番までの得点「5+4+4=13」
d Pライン右側のN番までの得点「1+1+2=4」

注意係=7−2/13−4=5/9=0.56

なお,ここに示した例は問題数が5問であるが,注意係数は,問題数が少ない場合は信頼性が乏しいので,10問以上であることがのぞましい。

(注意係数の求め方は古藤泰弘氏の提唱する力法によって説明したが,このほかに,勝田広一氏の提唱する方法もある)

5.おわりに

S−P表による授業診断の方法として,三つの方法を述べたが,いずれも,それだけで完ぺきな診断ができるものではない。ここに述べた方法にさらにそのほかの方法も加えて,総合的に診断されしることがのぞましい。

このような診断は手数のかかるものであるから,ひんぱんに行うことはとてもできない。しかし,学期1回,それが無理なら年1回でもよいから,しっかりした診断を試みるようにのぞんでいる。


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