福島県教育センター所報ふくしま No.23(S50/1975.10) -017/026page
情 報 処 理 と 教 育
第 3 研 修 部 金 沢 義 夫
ひとつの
もの をえらぶとき,これにきめるか,それともあきらめるか,あるいは一度きめたものでもこの際はあきらめよう,というように心が動く。しかし最終的には決定的瞬間があって行動にうつる。この行動をきめる心のはたらきを意思決定という。
情報とは,ひとつにはこの意思決定に役立つ知識のことである。
広い意味でいうならば,記号・図形・五感またはそれらのあつまりで表わされた知識なり感覚は意思決定につながる情報なのである。
夕食中,けたたましく半鐘が鳴ったとしよう。半鐘の音は,火災発生の情報である。しかし,どこが火災なのかの情報が得られないと,どうしてよいやら不安になる。このようなとき,「○○のあたり」でも情報である。
けれど真・偽とともに方向,距離,風向きなどが数量で表現されていれば,意思決定には一層のぞましい。
また情報というものは,後日なんらかに役立つものかどうかわからないものもあり,反対に前に情報を得てさえおけばよかった,という場合もある。
―般的には,見込みちがいがあっても後日の意思決定に役士つことを望んでいるものだ。
このように情報は知織である,と考えた場合には時間的に,ひとつの問題をもっているものである。
ときに,一人の人間は生涯にあって何回か意思決定をせまられている。
数多くの意思決定は重大なものと,さほど重大でないものとにわけられるが,とまれ個人にとって意思決定をせまられることは「何をなすべき」を問われたことである。換言すれば,ある動機づけがあって,バラバラにある異質のものを,自発的に統一しなければならなくなったことである。
左・右の事柄と,前・後に列する事柄からなる座標軸の原点に自分をおいて,ひとつの効果あるものを示さなければならないことである。
従って,もしもこのときに,どのように眼前の現象をとらえ,どのようにすれば現象と情報交換が行えるかを知っている,知らないでいるかは,その人間の意思決定にとって重要な影響をあたえる。
また,意思決定をせまられた場合,情報だけをたよりにして,自分のなかから新しい能カをひきだすのは容易ではない。
方法として,問題を具体化する要領を心得ておいた方が得策である。その方法は
・連続した考えをもっていること。
・反面,そのもののもっている特性を知っていること(非連続性)の両者に加えて直観を見すてたいことである。
しかし実際は,多くの情報をどう整理してひとつのパターン(型)におさめるかという−そのパタ一ンにするやり方がわからないのが現状である。
そのとき,どうしても学習が必要になる。
教育を極端な姿でとらえると,訓練と啓発とに分かれる。訓練とは,好ましいと決めた動作なり判断を目をつぶってもやれるようにすることである。いうなれば「枠はめ」である。
啓発とは,その人なりに今まで身についていた事柄から枠をはずすことである。
訓練は,どんな動作なり判断が,目をつぶっていてもやれるようになって欲しいかを明らかにしなければならない。すなわち訓練目標をたてることである。
この訓練目標を前にして,今はすくなくともこれだけは目をつぶってもできるとはっきりつかめたものが既習学習事項である。
既習学習は,納得するという判断カのひと過程であり,AとBの関係を具体的な体系にととのえるエネルギーである。
このように訓練はある約束を納得することだが,その意味をあらわす表現を何にするかをしっかり約束したときに,その学習が完了している。
すなわち,コーディング(記号化)できたときに学習したということになり,バターンをとらえたことになる。
コンピュータ,正確にいえぱ,ディジタル形・プログラム・内蔵・電子・計算機である。
ディジタル :ある情報をはっきり区別してさしつかえない状態とする。 プログラム :情報内容の順序づけをする。 内 蔵 :のみ込んで記憶すること。