福島県教育センター所報ふくしま No.24(S50/1975.12) -003/042page

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デンプンのりにた液を加えてヨウ素デンプン反応が出なくなることから,その要因をだ液と決定するためには,だ液を加えなかったときに,反応が起きるという事実が対照とならなければならない。この実験では,水を加えたデンプンのりが,いつまでもヨウ素ヨウ化カリウム溶液と反応するところに大きな意味が含まれている。

単に,だ液が含まれていないから消化が進行しないとするのではなく,二つの実験を対比させながら,考えさせていく指導が必要である。

3.そしゃくによる消化の違いを調ぺる実験と条件統―

食物が、そしゃくされることによって、消化されやすくなることを調べる実験は,食物の粒の大きさを変えて,消化の状態を比較する方法が考えられる。この実験では,粒の大きさ以外の条件を同じにする条件統―が,科学の方法として指導されよう。

実験2 
そしゃくと消化の関係を調べる。

ねらい
(1)食物のそしやくと消化の関係をつかませる。
(2)実験を比較するときには,条件の統―が必要であることを理解させる。

準 備
ごはん、割りばし,、乳鉢、ヨウ素ヨウ素化カリウム溶液、時計皿、ビーカー

方 法
(1)3枚の時計皿を用意して、ごはんを―粒ずつ入れ 2mlの水を加えて割りばしで同じ回数だけついて,小さい粒にする。
(2)3粒のごはんを乳鉢に入れて,6mlの水を加え、乳鉢でよくすりつぶした後,3枚の時計皿に同じ量に分ける。(3)脱脂綿を口にくわえてた液をしみこませ,取り出してビーカーーにしぼり、水で10倍にうすめる。
(4)(1)(2)で用意した時計皿と,(3)で用意したビーカーを定温器に入れて37℃に保つ。しばらくしたら,それぞれの時計皿に(3)のだ液を1mlを加え、0分、5分後、10分後のヨウ素デンプン反応を調べる。

結果と考察

写真2はその結果である。

乳鉢ですりつぶしたもの
写真2 乳鉢ですりつぶしたもの

割りばしでつぶしたもの
写真2 割りばしでつぶしたもの
写真2

乳ばちですりつぶしにものは,10分後にほほとんど消化が終了しているのに対して,割りばしでつぶしたものは粒の大部分が消化されずに残っている。この実験からそしゃくと消化の関係をとらえさせることができよう。

この実験では、統―する必要のある条件として,消化させるごはんの量、加える水の量、温度、だ液の濃度,割りぼしでつぶす時の回数,加えるだ液の量、ヨウ素ヨウ化カリウムの量などがあげられる。この中のひとつの条件でも統―されなければ、この実験は成り立たない。児童の発達段階から考えて,この条件のすべてを取り上げることはできないが,二三の条件を選び出して,それらの条件が統―されなかった場合に,結果がどのように変わってくるかを考えさせ,条件統一の必要性を具体的な事柄を通して理解させていくことが大切である。

4.糖の検出と検証実験

デンプンの変化した物質が糖であることは,ヨウ素デンプン反応からはつかむことができない。そのため,次の実験へ発展するためには,糖の検出が必要になってくる。教科書の中には,フェーリング液を用いて検出する方法を載せているものもあるが,ここでは、操作の簡単なべネジクト液を用いてみた。

この実験は,ごはんやパンをながくかんでいると,しだいに甘くなるという,児童の生活経験をもとにして,組み立てていくのがもっとも自然な展開であろう。つまり、デンプンが分解されると糖になるという予想を実験によって検証していくことになる。

実験3
べネジクト液を用いて糖の検出をする。

ねらい
デンプンが,変化してできた物質が糖であることを調べる。

準 備
べネジク液(硫酸銅17.3gクエン酸ナトリウム 173.0g、炭酸ナトリウム100.0gを水に溶かして1 リットルとする),試験管,ビーカー,加熱器具,三脚,実験1で用いたデンプンのりにだ液と水を加えて37°Cに保ち5〜10分間経過した試料,5%ブドウ糖水溶液または,5%麦芽糖水溶液

写真3
写真3

(1)5%ブドヴ糖水溶液または麦芽糖水溶液を5ml試験 管にとり,べネジクト液を2ml加 え、写真3のようにして加熱する。

べネジクト液は、還元性を示す糖と反応して、赤かっ色の沈殿を生じる糖の検出試薬であるが,フェーリング液のように,2液を混合させて用いる必要がないために扱いやすい。加熱については,アルコールランプで直接加熱をしてもよいが,突沸をさけるためには、熱湯につけて反応させる方が安全である。


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