福島県教育センター所報ふくしま No.24(S50/1975.12) -004/26page
(2)実験1で用いた試料を,それぞれ5mlずつ試験管にとり,2mlのべネジクト液を加えて加熱し,反応 の色を比較する。
結果と考察
だ波の中の酵素によって分解きれた糖は,べネジクト液と反応し,その分解の進みかたによって,緑色,黄色あざやかな赤かっ色の反応色を示してくる。この変化は,児童の予想が確かめられたことと相まって,糖の存在を強く印象づけることになるであろう。しかし,ここで注意しなけれほならないことは,べネジクト液の性質を知らせた上で実験に入ることである。直接,試料にべネジクト液を加えても,反応は同じであるが,その意味は,まったく異なってくる。まず,べネジクト液が,少量の糖に対しても敏感に反応することを知らせ,口の中で変化してできたうすい糖についても,この試薬を用いて調べることができるという根拠を明らかにする必要がある。このような過程を経て,はじめてこの実験が,児童の予想に対する検証実験として成り立づことになる。
5.セロハン透析法と吸収のモデル
消イ化が,大きい物質を小きい物質に変え,吸収されやすい方向に進むことを思考きせるためには,糖が,デンプンより小さい物質であることをわからせなければならない。この大ききを比較するために,従来からセロハン透析法が用いられてきている。この実験は,吸収の仕組みをモデル化する時に大切な手掛りになってくる。
糖がデンプンより小さい物質であることを調べる。
実験4 ねらい
セロハン透析法によって,糖がデンプンより小さい物質であることを確かめ,消化が,大きい物質を小さい物質に変化させる現象であることを理解させる。準 備
セロハンチュープ(ビスコース法で再生したセルロ ―スを主成分としたもので,透析用として開発されて いる。直径15〜22mmのチュープである),試験管,糸,5%プドウ糖水溶液,1%デンプンのり,べネジクト 液,ヨウ素ヨウ化カりウム溶液,ビーカー,加熱器具方 法
(1)1%デンプンのりと,5%ブドウ糖水溶液を等量混合し,この液について,ヨウ素デンプン反応と,べネジクト反応をおこなう。水についても,反応の有無を調べる。
(2)セロハンチューブの下端を糸
でむすび,その中に1%デンプンのりと5%プトウ糖水溶液を等量ずつ混合した液を入れ,上端を糸でむすぷ。
(3)(2)で用意したセロハンチューブを水洗いし,図1のように水の入った細い試験管に入れ,30〜40分間放置する。(4)試験管からセロハンチューブをとり出し,チューブの中の液と,試験管の中の水について,べネジクト反応とヨウ素デンプン反応を調べる。
結果と考察
表1は,その結果である。この実験のねらいは,セロハン透析を通して,大きい物質が,小さい物質に変した事実をつかませることにある。このことは,モデルをつくることによって,より確かなものになるであろう。糖がセロハンチュープの外に出たことによって,ふるいの目の存在が考えられるであろうし,その目を通過したものと通過しなかったものから粒子の存在と粒子の大小が考えられよう。もちろん,ここで考えられるモデルは,このような粒子モデルだけとは限らない。糖がしみでていくと考えただけでも、デンプンとの大小は比較できる。
また,セロハンデュープそのものを腸のモデルと考えるならば,粒の大きいデンプンが,小さい糖に分解され,小腸から血管の中に吸収される過程を考えさせるのに好都合である。
いずれにしても,モデルをつくらせるにあたっては,児童に創造的な思考の場を充分にあたえ,自由な発想で考えさせることが大切である。
6.おわりに
消化・吸収の実験について,科学の方法の指導を中心に述べてきたが,ここに取り上げた実験は,この教材を取り扱う上での―例にすぎない。
わたしたちが,簡単に見過してきた実験や観察の中にも,科学の芽をのばすものが,まだたくさんあるように思われる。特に探究の過程の指導や,科学の方法の指導については,このことが強く感じられる。教材を,もう―度,別の観点から見つめてみることも,大切なことである。また,科学の方法は,同じ手法が何度か繰り返される過程で,はじめて身につくものである。そのためにも,科学の概念を形成させていく過程を大切にすると同様に,どこで,どのような操作や考え方をさせるかという計画をもって,授業にのぞむことが大切である。