福島県教育センター所報ふくしま No.24(S50/1975.12) -012/026page
本立の設計授業を参観したが,ここでは本立の自作した模型を用いて構想の修正とまとめを学習していた。
教師の説明に基づいて,各要素を理論的に考察していた学習態度は誠に立派であった。
修正されまとめられたものを示すと
・大きさ 20%
・材料の使いかた 44%
・接合法 60%
・形(バランスと美) 82%このように自作模型をみて多くの修正点のあったことは,生徒達は本立の機能,材料,構造などの設計要素とその理論的なものが未熟のままに模型がつくられ,教師の指導によって理解を深め,創意性が高められた結果を示したものといえる。
摸型活用の利点としてその教師は次のように述べている。
・立体的構想ができる。
(能カの低いものもわかる)
・教師の指導も容易になる。
・自己点検,相互点検ができる。
・創意くふうの研究と交流ができる。
・構想のまとめができる。
・製作図,材料表,工程表にも活用できる。
(指導時間の短縮ができる)(2)製 作
設計の段階が創造方を高める過程であるならば,製作段階は,理解にもとづく実践的な態度を育成する学習分野ともいえる。
木取りや,木工用具の使用法,木工機械の構造と操作法など,その殆んどが実践過程の中で経験し,理解し,更に思考を深めていく段階である。
木工具の使用や機械使用は,その目的が木材を切削することにあるので,原理についての理解を深める必要があり,それにともないそれらを正しく使い,操作することができなければならない。
できるということには
・まずやってみる(初歩的経験)
・できる(まねしてできる。ひとりでもできる)
・習熟する(じょうずにできる。他に転移してできる)があるそうだが,ここでは少なくとも,じょうずにできるまでという目標設定をすべきだと思う。
また,じょうずにできるためには, 正しい測定 と 作業の正確さ が要求されなければならないので,教師はこの点についての指導にも注意しなければならない。
加工作業においては生徒達は異常なまでの製作意欲を示し作業に取組 むが,刃物を取り扱う授業であるため 危険度の高い 授業でもある。
特に木工機械においては思わぬ大事故にもなりかねないことがあるので十分注意しなければならない。
研究会などで,いまだに手押しかんな盤を使用している学校もあると聞くが,作業の安全性からみて,これの使用は生徒学習に禁ぜられておるので絶対にそのようなことのないようにしたいものである。
中学校技術・家庭科における工作機械等の使用による事故の防止について
43.2.12文部省初等中等教育局長通知塗装作業ににおいても,各種の塗料が市販されており接着剤についても同様である。
なかには 有毒性 のものもあり 揮発性 のものもある。
それらの取扱いについては,特に適切にして作業の安全と合理的なものにしていかなげれぱならない。
生徒の健全な心身の発達を促し,実践的態度や,創造性を育てる技術・家庭科において,事故発生をみることは教科本来の目標に逆行するものであり 安全教育 には十分注意して指導していかなければならない。
(3)木材の特性と実習題材の選定
・木材の特性
最近はラワン材や合板の普及とその利用がとくにめざましいものがある。
しかし在来からの木材の素地を生かした構造物や,樹種特有の美しさを見せる工芸品などは,その樹種ならではの感がある。
木材は―般的に針葉樹と広葉樹に大別されているが,針葉樹にもいろいろの樹種があり,広葉樹の樹種もまた豊富である。
それだけに,その樹種々により,おのずから特有の性質をもっている。
同じ樹種でも先天的な樹幹の形状を除いては,立地条件によって樹幹の構成,織維方向の乱れ,或いは樹体中の比重分布などそれぞれ異なっており同一樹体でも異なる。
○構造的な特徴
年輪 春と夏(秋)材 辺材 心材 木口面 板目 柾目 木理 組織 節○物理的なもの
比重 含有水分 膨張 収縮 伝導○機械的性質
があり,針葉樹と広莱樹のちがいや,同じ樹体中でも異方性がある。
第1学年では,木材の繊維方向の強さと膨張と収縮について指導することになっている。