福島県教育センター所報ふくしま No.24(S50/1975.12) -014/026page

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小・中 学 校

学 級 経 営 を め ぐ っ て

ー望ましい人間関係づくりの―場面ー

研究・相談部 吉 田 友 保

はじめに

人為的・合理的に「つくられた」集団 つまり学級は,極言すれば未知の児童・生徒が,未知の教師によって指導・統―されるひとつの単位集団であり,編成の時点におけるその成員は,子ども対子どもはもちろん,子ども対教師の関係においても,心のふれ合う人間関係が育成されてない状態にある。

学校教育の実践場面は,主に学級という―家庭にあり学校生活全体の母体となるものであると考える時,こうした人間関係は,はやい時期に育成されなければならない。まして,最近さかんになりつつある教授組織の改善によるティーム・ティーテングや小学校における専科担任制等の実施は,より深められた教師と児童・生徒の人間関係が必要であることはいうまでもない。ことに福島県の場合,人口の過疎過密による学校の統廃合がなされ,統合校においては,人間関係づくりが容易ではない現状を考えればなおさらのことである。

1.教師対子供の人間関係

新しい学級編成が行われ,新しい担任教師を迎える子どもたちの心境は,不安と期待の交錯である。こうした子どもたちは教師に対してどんな見方・考え方をもっているのだろうか。個々の子どもによる差異ほあるものの,―般的には次のような好きな条件,嫌いな条件をあげている。

 
  好きな項目   嫌いな項目
・ユーモア     ・まじめ
・親しみ易い    ・陽気
・やさしい     ・公平
・運動がうまい
・はきはきしている
・一緒に遊ぶ
・相談にのる
・数え方がうまい
・時間を守る
・短気,おこりっぽい
・運動がへた    ・がんこ
・えこひいき    ・いばる
・ユーモアがない
・こごとをいう
・独断的
・乱暴
・厳格

 今、前記の「好きな項目」の「親しみやすい」を例にとってみよう。

  ―ある中学校で,先生が子どもたちに,「先生の良いところ,悪いところをいってみてくれ。」と頼んだところ,よい点悪い点がたくさんあがった。先生はほめられて笑ったり,叱られて頭をかいたりした。このことがあって間もなく,子どもたちの間でも「お互に良いところ悪いところを出し合ってみよう。」という声があがつたという。―

教師が子どものなかにはいってゆき,友だちになり,そのなかで子どもたちが教師に対して「先生も自分たちと同じ人問であり,失敗もすれぱ欠点もある」ということを理解したとき,教師に対して限りない親しみと信頼とを感じ,いつわりのない自己を表出するようになる。

教師が自己を語ることによって,子どもにも自己を語らせることができよう。どの子も教師に安心して何でもいえるふんい気,子どもたちの喜びはもちろん,不平や不満にも耳をかたむけ,表出しない声までも聞いてやる教師,反面,子どものいいぷんに安易に妥協せず,きびしさをもつ教師……こうゆう姿こそ望ましい人間関係づくりには欠かせないものと思う。

「教師は,水車をまわす水である。」つまり,水車(学級内の子ども)から離れては水車は回転しないし,水車を半分以上浸してしまっても回転しない。適度の触れ合い(ある時は子どもの友人となり,ある時は次元を異にした教師としてのきびしさ)があってこそ効率的な回転が生じる。

 2.子ども対子どもの人間関係

前にものべたように,人為的に「つくられた」集団で


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