福島県教育センター所報ふくしま No.24(S50/1975.12) -015/026page

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ある学級が,ひとつの生活共同体として統―され,共通の学習活動,共通の生活経験を積み,やがて他の学級と「自己の学級」とを区別する集団意識を生みーー 級風の確立へと発展していく基礎は,とりもなおさず,子どもひとりひとりがお互を知ることから出発しなければならない。

よく 「愛情は,相手を知ることからはじまる。」といわれるが,個々の子どもが自分のこと,生活環境,校外での生活事実等をお互に紹介することによって,心の触れ合いが生まれ,望ましい人間関係が育つのではないだろうか。

ここに,飯田市松尾小学校1年の実践例を引用してみよう。

○第1段階

―全部の子どもが交替でみんなの前で,おじぎをすること―

 これだけのことをするにも,容易なことではなく,気の弱い子は赤面したり,緊張しすぎたりする。元気なものは,調子づいたり,ふざけたまねをするものもあり,さまざまであった。行儀よくきちんと礼をするまでに10回ぐらい要した。

○第2段階

―礼をして,名まえをいうこと―

 「ぼくは,○○○○です。」というように,これを数10回くりかえした。はっきりと全員にわかる大きな声でいえるまで練習をつませた。その効果があって,平気で気安く人の前に出ていえるようになった。

○第3段階

 ―きのう,あったことのうち,1つだけを発表すること(遊んだこと,お手伝い,変ったこと……)―

「きのう,かくれんぽをしました。」「きのう,おふろの水をくみました。」「きのう,おとうさんに本を買ってもらった。」「きのう,妹が病気になった。」などのような発表をさせた。ここでは案外容易にできるようで,こうした発表にぽつぼつ興味を示し出した。

○第4段階

 ―さらに細かく発表させること―

 「きのう,家へ帰ったら,おかあさんが,うさぎの草をとってきて,といったので妹を連れて田んぽに行きました。草をうさぎにやると,よろこんで食べました」というように,無理な強要をさけて,忘れたものはそのままにして,事件だけをいわせた。この段階になると時間も長くなってきたので,机の並びによって1列ずつにして全員の4分の1を毎朝話させるようにした。話の内容にも若干の差が出てきたが,とにかく全員がよろこんでやれる態勢になってきた。

○第5段階

 ―発表者に対して,聞き手の子どもたちに質問させたり,話の切れ目で「うん」といわせること―

  ・うさきは,何びきいたの。
  ・どんな草をよろこんでたべたの。

 などのように質問する。話を「うん」ということばで受けとめさせたり,質問をさせるようにする。こうすることによって,だれとでも友だちになって,自由に話し,聞き合えるふんい気になってきた。
                                  (原文のまま―以下略)

 この実践例は,小学校入学当時からの記録であるため内容がかなり単純・幼稚であるが,学年が進むにつれてその学年に適した方法が生み出されると思おう。いずれにせよ,子どもひとりひとりが自分のこと,自分の毎日のくらしのようす,自分をとりまくさまざまな出来事,さらに発展して,クラス内での問題等をみんなに知らせることによって,子どもがお互を多面的に見,多面的に理解することになる。これがやがて,敬愛・協カ・友情・親切等の暖かい人間関係づくりに発展していく。

 3.問題のある子と人間関係

  次の事例は,私がA中学校で経験したものである。3年生を担任した時,Bという生徒は,

 ・家庭生活―両親は離婚し,おばの手に育てられ,いとこ夫婦のきびしさに耐えて生活,家庭 では萎縮した生活態度がみられる。

 ・学校生活―行動が粗暴で,ひねくれ,休み時間は活発で下位集団を強引に仲間にいれて行動 する。―方,授業中は孤立状態で,学習意欲なく成績はオール1,おとなしいと 思うと机に傷をつけたり,勝手なことをしている。

やることなすことが、ことごとく級友の反発をかい、クラスのふんい気は鉛のように重苦しいものだった。

1学期の終業日,通知票を渡す順番がBにまわってきた。彼は通知票をうばいとるようにして持ち去り,教室の片すみですぐにひきさいてしまった。唖然とした私は,次の瞬間,血が逆流するような怒りを覚えた。まさ


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