福島県教育センター所報ふくしま No.24(S50/1975.12) -016/026page

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に,教師の常識的な尺度でほ測れない子どもの姿であった。自分の担任している子どもについては,何でも知っているような錯覚が現実の姿として表出したのである。

このことがあってから,Bに対する私の見方は,180度の転換を迫られた。つまりぞの1つは,―面だけをとらえて張った悪のレッテルをはがすことであり,2つには,つとめて接触の機会を多く持ち,日常生活について話し合う時間を設けてほ,Bの長所や美点をみつけることであった。

Bの行動を,ひとくちに社会的不適応児型と名づけてしまえば,それまでである。親の愛情に飢え,家庭生活のきびしさに抑圧きれ,その反動としてとったBの行動は,クラス内だけで処理できる問題でほないが,少なくともBの生活条件からくる 人間としてのひずみ ーを生んだ生育歴や家庭環境を理解し,Bの立場に立って考え,そのなかでの同情,思いやりの感情を持つような人間関係が,私はもちろん,Bをとりかこむ子どもたちの間に,早い時点で育てられていれば,こんな結果は生まれなかったと思う。・・・・・ちなみに,その翌年,私が次の3年生を修学旅行に引率した際,就職先よりまっ先に旅館を訪れたのはBであったことを・・・・・・。

 4.むすび

学級経営における望ましい人間関係づくりの―場面として,相互理解を中心にのべたが,これを多面的にとらえるためにも,教室だけの接触でお互を―面的に見たり教師もまた,単なる先入観で子どもの姿をとらえ,さらには常識的・―般的な尺度による見方をすることは,厳につつしまなけれぼならない。

自分の思っていることをいえない子には,まず自分を表現させる(自分の生活を友だちにわかってもらい,友だちに自分の生活を認めてもらう)ことによって,自他を生かす具体的な道となり,自己主張ばかりして他人のことを考えない子どもも,他人の立場に立って考える素地ができるであろう。

こうした人間関係ができれば,問題を持つ子・約束を守らない子

 ・遅刻をした。   ・授業時間におくれた。
 ・廊下を走った。  ・掃除の時、けんかをした。

の,ただ表面的な行動だけをとらえて批判する態度,

 ・遅刻をしないでください。
 ・これからは,注意してください。

から,「なぜ,そのような行動をするのか。」

 廊下を走ったなら,走った事実を正直にありのままの姿として出し合い,そこに出し合わされた事実そのものの中から,

・先生が,なかなか授業をやめなかったので、休み時間が短くなり、児童会の係の先生との連絡のため急がねばならたかった。
・便所の施設がたりない。
・運動場の遊び場所を,よそのクラスの人にとられてしまう。

と,いうような原因を考える態度に前進させることができ,その行動要因(事情)
 「朝,おうちの手伝いのしごとがあったので遅刻をした』
によっては,その子の行動は学級の暖かい人間関係によって許されることにもなるし,そのような場合には,どうすればよいかという具体的な解決策をみんなの問題として考えることができるようになってくるだろう。

 おわりに

学級経営に関する理論や具体的方策については,すでに多くの専門書や研究物(実践報告書)等によって究明され,各学校でその実をあげているところであるが,それが表面的・形式的な記録や評価に終ってはならないと思う。

学級が教師を軸として,多数の子どもが結ばれ合い,機能しあっている集団である以上,その基盤となる人間関係づくりは,教師が学級という集団の外側にいて,外側から作用をおよぽすことによってのみなされるものではなく,むしろ教師自身がその学級集団の一員となってとけこんでいき,教師対子どもの相互理解から,子どもたち同志の相互理解へと進む過程でなされると思う。

さらに,リーダーの育成,生活グループ・学習グループの育成はいうまでもなく,教室環境構成の改善,生徒指導を通じての子ども理解,ソシオグラムや個人観察記録等の活用筆・・・・・さまざまな角度からなされなければならないことも付言しておきたい。

      参考文献         宮田丈夫編著「学級経営の理論と実践」
                        (明治図書)

         宮坂哲文著「学級づくりの道」
                        (明治図書)


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