福島県教育センター所報ふくしま No.25(S51/1976.2) -002/026page

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中学校国語科における生徒の実態は握

その方法と実態の―側面

第1研修部 猪 狩 貞 一

1.はじめに

新しく教科担任となった時,生徒のようすを知るために指導要録を開く。その中で,ある生徒の国語科の評定が「3」であり,観点の「読むこと」にXがついていたとしたら,その生徒をどう考えるであろうか。

「読めない」といっても,読みのカのどの面に欠陥があるのだろう。読字カが乏しいのか,読解カが劣るのか,それとも,読みの速度がおそいのか……。さらに,その原因は知能的なものなのか,性格的,身体的,家庭的,教育的要因のうちのどこにあるのだろうか。

学校教育の主目的が学方をつけるにあるとき,指導のスタートはここにある。 「地域や学校の実態,生徒の実態に即し,学年の目標や内容によって,学習活動を年間にわたって設定する。」(文部省 中学校指導書国語編)とあるのも当然である。

ここでは,「生徒の実態」とは具体的にどんなことなのか,また,高等学校では新入生の国語方をどうみているのかを述べ,年間指導計画の作成や修正上の参考に供したい。

2.生徒の実態は握の方法

(1) ―般的な実態は握の方法

・知能テスト

国語の成績があがらない場合,知能との相関をみる必要があろう。つまり,学習指導は,生徒の 知能の水準を知らなくては,円滑に,効果的に進 めることは困難である。数値を絶対視はできない が,このために利用されているのが知能検査である。

・学カテスト

生徒の学カのは握がひとりよがりにならないた めには,標準化された学カテストの利用を考える べきであろう。国語科の場合,学年別,観点別診断検査が使われており,学校によっては,読書カ 診断テストを行っているところもある。

・学習習慣・学習態度テスト

優秀な知能をもちながら,それ相応の学方をもちえない生徒がいるが,これらは,学習習慣や学習態度が好ましくない場合が多い。注意カ,ノートのとり方,家庭での計画的な学習等の実態を知り,適切な助言によって改善させるために学習適応性検査などがある。

・興味テスト

国語科に興味があれば,生徒はしぜんにカがはいり,成績があがる。逆の場合は,勉強する気がせず,成績はさがる。したがって,学習に対する興味を調査し,興味が欠けているところは,興味を喚起するような対策をたてれば,意欲的に学習するようになろう。

・性格テスト・環境テスト

学習に大きな影響をおよぽす性格や環境を調査するテストもあるが,内容については省略する。 以上,ことばをかえれぱ,学力を規定する要因をとらえるテストを挙げたわけであるが,―つのテストでいくつもの要因を調査することはできないから,それぞれ目的の異なるテストを組合せて利用することによって,より客観的な実態をとらえることが可能となるわけである。

しかし,時間と経費の制約もあり,すべてのテストを実施するわけにはいかない。したがって,年間評価計画をたて,計画的に実施すべきである。

(2)国語科としての実態は握の方法

・生徒の言語経験を具体的に調査するため,東海大学の石井庄司氏は言語経験の自己評価の例として下表のようなものを挙げている。 (中学―年生が入学当初に生徒自身で記入して,担任教師に提 出する)

           調査 年 月 日( 曜日)
            氏名
             第―学年 組 性別 生年月日

1.特殊の言語経験について

○小学校六か年のうち,司会進行係をしたことがあるかどうか。(ある,ない,以下同じ)

○学芸会・発表会などに出て話をしたことがあるかどうか。

○学級新聞・"学校新聞・文集などの編集に参加したことがあるかどうか。


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