福島県教育センター所報ふくしま No.25(S51/1976.2) -005/026page

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小 学 校 教 材

電流による磁力のはたらき

第2研修部 長谷川 件七郎

1.はじめに

従来この内容に関する指導は,最初に既成の電磁石を児童に示して,そのつくりやしくみをしらべさせ,それを参考にして,自分たちでかんたんな電磁石をつくる。次に,それを使って,磁カのはたらきの強さや,磁極の区別について,実験をして,結果をまとめさせる。という過程ですすめられ,更に電磁機やモーターなどのしくみに結びつけて,電磁石の機能的な面を強調した指導がなされてきた。

このような児童の生活の中に問題をみつけて,それを解明していく学習を否定するわけではないが,ややもすると,時間的な制約などから,単に,電磁石の構造や機能を教えるだけにおわりがちである。もっと「電流の磁気作用」というより本質的な立場からの,いいかえれば,4学年で学習した「電流の通っている導線のそばに磁針を置くと,その針がふれる」という経験をよりどころに電流に対してどのような磁カのはたらきが生じるか,コイルに電流を通したときはどうかなど児童の思考に論理の―貫性と深まりをもたせる指導の必要を感じるのである。

現行の指導要領もこのような見地に立って,日指導要領の「電信機・ブザー・電鈴の製作とそのしくみとはたらき」(5学年) 「モーターの製作やしくみとはたらき」(6学年)などを排除し,より本質的見地から新しく6年生において「電流によって,導線のまわりに起る磁カのはたらきを理解させる」に含まれる学習内容を提示している。しかし小学生にとって,電流の通っている導線のまわりに起っている同心円状の磁カのはたらきを理解し更に,それを変形したコイルによって起る磁カのはたらきの方向や強さを理解させるのほ容易ではない。

そこでこの教材を理解させるための自作の実験器具などを紹介しながら内容を検討してみたい。

2.指導内容の検討

最初にこの教材にかかわりのある先行経験をたしかめてみると,
<1学年>じしゃくあそび(じしゃくは物を引きつけ る)

<2学年>豆電球を点燈させるには,電気を通すもので回路を構成する必要がある。

<3学年>豆電球のつなぎ方に2とうりあり,そのつなぎかたによって,豆電球の明るさがちがう。

磁石の二つの極は性質のちがいがあり,磁カの強さや方向は,両極からの隔たりによって違いがある。

<4学年>2個の豆電球のつなぎかたによって豆電球の明るさがちがい,それは豆電球や導線を流れる電流の 大きさに違いが生じておこる。

方位磁針と平行においた導線に電流が流れると磁針 がふれる。

<5学年>電流による発熱のし方については,電流の大きさと発熱,発光のはたらきの関係を水熱量計を用いてしらぺ,発熱のほたらきは,電流の大きさの違いなどできまること。

などを学習している。特に,4学年で,方位磁針と平行においた導線に電流が流れると,磁針がふれることを経験しており,6学年における電流と磁カのはたらきの関係を学習する直接の足場とすることができる。

以上のような既習事項,および学習指導要領の内容を検討し次のように指導の目標を定めた。

ア.電流の通っている導線やコイルのまわりには
 磁カのはたらきが生じ,そのはたらきの方向
 は,電流の向きに対して―定のきまりがある。

イ.電流によって生じる磁カのはたらきの強さは,
 電流の大ききやコイルのまき数によって変る。

ウ.電流の通っているコイルは,鉄心を磁化する
 はたらきがあり,そのはたらきは―般に,電流
 が大きいほどよく,またコイルのまき数が多い
 ほどつよい。

エ.電磁石の性質と永久磁石の性質を比較させ,
 電磁石では,コイルに電流が通でているときだ
 け磁石になることや,電流の方向によづて,磁
 極が変わること。

以上のような,電流による磁カのはたらきについての学習をし,5学年で学習した発熱,発光の学習とともに,電流によって起る,物としてとらえられない電気に関する諸現象の―応の認識を得きせ,中学校での電気,磁気の学習へ発展させる。なお電流の大きさやコイルのまき数を統―して,磁カのはたらきの強さをしらべることや,部分の測定から他の部分の状態を類推したり予想したりすることなど,いわゆる科学の方法についての指導については,実験,観察のところで述べる。


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