福島県教育センター所報ふくしま No.25(S51/1976.2) -008/026page

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中学校におけ る 中和反応の指導

第2研修部 佐久間 善 克

酸・塩基の中和反応は,小学校6年の教材に取り上げられ,その後中学校3年,高等学校の化学と教材が発展していく。化学領域における中心的テーマの―つである。中和反応は科学記号H <(正しくは科学記号HO を考えなければならないがここでは科学記号 として考えていく)と科学記号 の反応であるが変化そのものを肉眼で観察することができないので,科学記号 または科学記号 の変化を,何らかの方法で測定して,中和反応を理解させていく方法がとられる。その方法には大別して次の3つが考えられる。

第lは科学記号 または科学記号 の変化量を直接測定していくPH測定法(酸・塩基指示薬による変色も含めて)第2は,科学記号科学記号 の反応によって生ずる中和熱による水溶液の温度変化の測定,これは,文部省編「中学校新しい理科教育」(昭和46年度改訂版)に理科教育現代化講座指導資料として取り上げられている。第3は科学記号 または科学記号 と交換されるイオンの移動度による溶液申を流れる電流値の変化の測定である。

中学校では,主に第3の方法が行なわれているが,―つの事象を指導する場合に時間の許す限りいろいろな方法で指導していくことが望ましいと思う。次にそれらについて説明していきたい。

T測定方法について

1PHの測定

PH計は,中学校理振品目に入っておるので,次第に各学校で購入計画を立てていると思うが,取り扱いが簡単で正確な測定値が得られやすいガラス電極PH計を購入されることをすすめたい。中学校ではPHの数量関係は指導しないが,酸溶液ではPH値が7より小さく,アルカリ溶液では7より大きい値をとることは理解させることはできる。溶液にガラス電極を入れてやれば,PH計の表示がそのまま溶液の液性を示すことになる。

科学記号 の量(濃度)によって呈色の異なる溶液(PH指示薬)をあらかじめ,測定しようとする溶液に加えておいても,科学記号 の変化を追跡することができる。

2 温度変化の測定

断熱性のよい発泡スチロ―ルコップ(容量200科学記号 )を簡易熱量計として,それに酸(またはアルカリ)をとり水温を測定する。他方水温既知のアルカリ(または酸)を加えて反応させ,その最高温度を測定する。水溶液は前日に準備して同じ温度にしておくとよい。温度計は,1/1O℃目盛最高目盛50℃のものをルーぺを使って読めば正確であるが,1℃目盛の温度計でもその傾向をとらえることができる。化学反応に伴うエネルギー変化を認識させる実験が少ないので是非実施したい実験である。

3 電流値の測定

ほとんどの学校で行なわれているもので,方法については省略するが,次のような点に注意しなければならない。溶液の体積は次第に増加していくので,溶液中に入っている電極の面積,電極間の距離,電圧,水溶液の温度などを―定に保つようにする。これらの条件が異なれば,当然,正しい測定値は得られなくなる。

これらの方法を実施する時にアルカりの体積のとり方によって二つの方法が考えられる。

(1)反応させる酸とアルカリの体積の和を―定に保ちながら(体積の割合を変えて),最大の温度変化をおこす体積比を見出していく方法

(2)酸またはアルカリの―方の―定体積をとっておき,他方の体積だけを変化させて,最大の温度変化をおこす体積比を見出していく方法

いずれの方法がよいかは,生徒の理解度などによって考えればよい。

TT測定値とその処理

Iで述べた方法で測定して得られた結果を次表に示す

NO. HCIの

体積

NaOH

の体積

温度差 PH 電流値
1 0科学記号 40科学記号 0度   340mA
2 5 35 1.9 13.08 320
3 10 30 3.9 12.99 280
4 1 25 5.4 12.31 210
5 20 20 6.9 2.31 150
6 25 15 5.5 1.16 280
7 30 10 3.7 0.68 370
8 35 5 1.9 0.52 450

表1 中和反応の時の温度差,PH,電流値HCl,NaOHの濃度は共にIM濃度

温度計は1/1O℃目盛のものを使用,PH計は,東亜電波HM-l8Bを使用,電流値は直流4V,銅極板2cmx2cm,極板間隔2cmのものを使用して測定,尚PHは,反応後純水100科学記号 加えて,全体を140科学記号 にしてから測定した。


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