福島県教育センター所報ふくしま No.25(S51/1976.2) -014/026page

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福島県診断標準学力検査問題活用の一考察

研究・相談部 金 田 充 夫

1.はじめに

「福島県診断標準学カ検査問題」は,教育調査研究所時代から,相当の費用と年月をかけて作成され,修正を加えられ現在に至っている。本県のテストは指導目標から評価目標と具体化し,本県の実情に即し,県内使用教科書を分析し適確に,しかも信頼性のある測定ができる問題をつくり,県単位の標本によるテスト結果にもとづいて,分析の基礎となる目盛りづけ(標準化)したものである。氾らんするテストの申で診断性,標準性の二つの性格をもつ本県テストは注目きれてよいものである。

現在ではコンピューターが―般化しつつあり教育診断のしかたにも大変換がもたらされるのではないかといわれているときであるが,本県テストを活用するとき手引き書の構成上,ややもすると陥り易い欠点に考察を加え,今後の研究の参考に供したいと考える。

2.診断についてー本質的診断ー

診断とは徹底的に知るという意味のことばとして用いられているものであるが,学カ診断の場合にも本質的には同じ意味を含むものである。診断は欠陥診断と原因診断の両面をもっが,個人欠陥診断の場合,相対的概念が面前に立ち表面的,皮層的になる傾向が強く,本質的な診断とはなっていない場合が多い。 本質的な診断とは,個人肉差異を明らかにすることである。つまり個人と個人との間の差異,いわば個人間差異を明らかにすることが診断でなく,個人独自の内面性に眼をむけた診断なのである。個人肉差異の概念による診断では,プロフィールから個人内の弱点,欠陥の発見に進められていくべきである。

3.得点についてー得点からの診断ー

―般的にいって,得点のみから診断しようとする傾向が強すぎないだろうか。

診断の視点には法則的なものがなく,テスト実施の目的によりその方法が異るぺきであるのに,テストの結果から導かれた得点など,数値ほかりを重視するあまり,学カ検査の実施は,得点をもとめることであり,その得点から学カの状況を診断することだ,などと考えたりする人もある。学カ検査の得点で,すべてのことを診断し,得点がでないと診断もできないなどと考えられたりもしている。勿論,学カ検査結果は得点によって整理,診断されることが―般に用いられていることであるが,ややもすると,得点が学カの高さを表わしているものだというような考えをもつ人がいることは大きな問題である。いろいろな領域の能カの程度を示した素点の合計だけで学カの高さなど表わせるはずがない。また,学カ検査の得点が,ものの高さをものさしで測定したときの測定値と同じように,学方を測った値であるかのような錯覚をおこすようになると問題は更に大きくなる。

学カ検査の結果を点数にするということは,測定問題に対する受験者の正しい反応に対し,点を与え,これを合計したことである。たとえ,偏差値に換算したとしても,本質的には,測定問題に対する正答数を表わしていると考えることができるのである。

しかし,数値で表わされると,人間はとかく信頼し過ぎる傾向を示すが,その数値のでてくる根拠を考え,慎重な取扱v、が必要である。つまり,ペーパーテストで検出できる学カは限られており,点数が学方をそのまま測定した値ではないからである。

このように考えてくると,学カ検査結果を考察するとき,得点にだけ眼を向けていたのでは,不適当である。得点は,各測定点における状況であって,この状況から関連的に診断することができるのである。結局,得点ほ予め,基準としてとらえられた被検者の中のどんな位置を示しているか,学カ偏差値などのような基準点を設け,個人肉差異の診断ができるようにされているのである。

この場合には,もはや,その得点が学カの何を表わすかでなく,基準となった標本のどんな順位のもとに相当する得点であるかを表わす統計的意味をもつのみとなってしまうことを認識していなければならない。得点は診断する場合の指標であって,真に診断すべきものは,指標を手がかりとして,内部にもとめていくべきである。その内部をさぐることにより,なぜ,そのような結果になったのか,原因までさかのぽって考察を加えることができるのである。

4.小間について―小問間の関連―

各小間が独立的に考えられ,小問間の関連があまりにも軽く取り扱われてる傾向はないだろうか。

ここで,学習者が身につけている知識や理解の状況また,それらの関連を診断したり,学習者の理解していった過程から学習指導上,反省しなければならない事項をみいだしたりする―つの方法を提示し,参考に


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